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オバマケア、日米健康保険の違い

日本は国民皆保険制度である。したがって安い自己負担で高い医療を受けられる。その分、国(つまり税金)が負担する部分は大きい。アメリカは医療費が高く、心臓手術や癌手術を施せば何千万円かかることは普通である。重病を患うと一財産失う、とアメリカでは言われる。たとえ医療保険に入っていても、そこまではカバーしない。アメリカの医療保険は民間会社が行っているので保険料がバカ高い。しかも歯や眼や救急など別々に保険をかけないといけないので、合計すると月十何万円にもなる。したがって低所得者層は保険加入が不可能である。

 

そこでオバマは皆が医療保険に加入できるACA(Affordable Care Act)通称オバマケアを提案した。これは医療保険加入者に、州が設立した健康保険購入機構(Exchange)を通した医療保険には州の補助金を得られるという制度である。これに対して共和党の州知事は、そのような医療保険に補助金を出すのは違法だと訴訟を起こした。実に34州がそうである。多くの国民はそれで諦めたが、オバマケアを巡っては最高裁まで争われた。共和党から推薦された裁判官が過半数を占める最高裁である。ところがなんと、6対3で補助金を受けるのは合法であるとの判決が出た。

 

さらにびっくりしたのは、ブッシュ前大統領に選ばれた保守の中心人物であるChief Justice John Robertsがオバマケアは合法であると主張したことだ。このRoberts裁判長は、オバマケアの趣旨はそもそも補助金を与えることにより、低所得者を含めた多くの国民が保険を享受できるシステムであり、州、国の購入に差別はないとしている。

 

しかしオバマケアは今なお賛否両論がある。若年層の保険料が上昇し、また、従業員50名以上の中小企業では週30時間以上働く従業員に対して医療保険の加入を義務づける。その一方で、今まで保険に加入できなかった低所得者層も恩恵に与れるという評価もある。

 

医療保険が義務づけられたことから、加入していない者にはペナルティが科せられる。このペナルティはFlat AssessmentとPercentage of Incomeのどちらか高い方を支払うことになる。Flat Assessmentは2014年に1人当たり95ドルであったものが2015年には325ドルとなり、最高額は975ドルとなる。Percentage of Incomeでいうと、2014年は収入の1%であったものが2015年には2%になり、世帯当たりペナルティの最高額はなんと12,850ドル(150万円)にもなる。これに対して共和党はどこまで抵抗するのかも見ものである。

 

冒頭に日本の皆保険を書いたが、医療費の増大の一つに、筆者は救急車があると思う。およそ救急車を呼んでタダの国は日本だけだろうと思う。そのため救急車の人口当たりの台数や出動回数も群を抜いている。例えばアメリカなどでは救急車を呼べば1500ドル(180万円)、そして救急車内で心臓マッサージをすればいくら、酸素ボンベを使用すればいくら、などなど、病院に着くまで100万円かかるのはザラである。そのため、いくら苦しくても自分で車を運転するか、家族が運転して病院にたどり着こうとする。日本はタクシー代わりに使う者もいると聞く。厚労省はこのあたりから国民の医療費に対する認識を変える必要があると思うが、いかがであろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
遠藤滋著 『中国人とアメリカ人』 文藝春秋 780円+税
日本が生きてゆくうえで米中に気を配らなければならない。著者は米中に計23年間いた元商社マンである。
日本人とアメリカ人よりも、中国人とアメリカ人のほうがより似ている。アメリカ人は自由と平等、人権尊重、民主主義、中国人は「中華思想」という自民族中心思想であるが、お互いに似ているところが多々ある。アメリカ人と中国人は、自己中心ですべての物事について現実主義者である。中国人は日本人のように集団を気にし、集団あっての自分といった考えはない。頼れるのは自分だけ。アメリカは移民の国である。国あっての自分ではなく、1人1人の個人が集団を組織し、それが州になり、国となった。アメリカ人は教会や社交クラブに属する者が多い。しかし人の干渉を嫌う。安全など、集団に属したほうが得と判断すると、それを支えるアメリカ社会のため戦場に出る。反面、中国人は100%人を信用しないので団体行動はうまくとれない。しかし両国とも自己主張や自己弁護がうまい。自国の利益のため、状況に応じて発言内容を簡単に変える。日本人は口下手で、自己主張もしない。また、すぐ謝る。アメリカ人も中国人もスピーチはうまいし、自己主張、自己弁護もうまい。両国民とも、まず謝らない。この本に私も同感である。私も自己主張できるよう頑張りたい。(読後感)

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