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国税庁、日本人の富裕層の囲い込み

アメリカでは相続税の基礎控除額は543万ドル(6億8千万円)、夫婦で合算するので1,086万ドル(13億6千万円)までの遺産なら相続税はかからない。一方、日本では標準世帯で4,800万円の遺産から相続税がかかる。しかも相続税率の最高はアメリカ40%に対して日本は55%である。そこで日本人は相続税対策に勤しむ。特に海外へ逃避する傾向が最近顕著である。外国財産調書制度などを設けて、海外に5,000万円以上資産を有する者は確定申告の際に、税務署にその内訳を報告しなければならない等の義務を課したが、依然として相続税対策が活発である。

 

そこで国税庁は富裕者を定義し、富裕者に認定された者の収入や資産の移動を監視するようにした。マイナンバー導入で資産を紐付けにできることも、追い風である。国税庁は監視しないといけない富裕者を「重点管理富裕層」と指定し、現在、東京国税局、大阪国税局、名古屋国税局内の富裕者に限定しているが、本年以降、全国に拡大する。

 

ここで「重点管理富裕層」とは何者かというと、(1)形式基準と(2)実質基準があり、(1)形式基準は見込保有資産総額が特に大きい者、(2)実質基準では、形式基準に該当しない者のうち、一定規模以上の資産を保有し、かつ、国際的租税回避行為その他の富裕層固有の問題が想定され、重点管理富裕層として特に指定する必要があると認められる者。

 

これでは富裕層で国際的に活躍している者は重点管理富裕層とされ、常に当局に監視されているということである。それでは富裕層の定義はというと、一世帯の純金融資産保有額が1億円以上5億円未満を「富裕層」、5億円以上を「超富裕層」と分類し、「富裕層」は95万3千世帯、「超富裕層」は5万4千世帯いるとされている。「超富裕層」のうち60億円以上の保有者は2,887人いるとされている。

 

以上のような定義に該当する者に対し、今後、国税当局は、それらの者の保有資産の動向や不審取引の有無等を多角的に分析するため、有効な資料情報の収集・蓄積に積極的に取り組む。そして必要とあれば、その者の関連法人等への調査、経過観察が必要な者も含め税務調査を実施するとある。

 

その昔、帝国憲兵隊は、共産主義者をマークし、私生活を徹底的に洗った。今も中国政府は反体制主義者を常に監視している。日本も国税当局が富裕層を日常監視するということであろうか。アメリカなら富裕層に政府が訴えられるが、日本の金持ちはいつもサイレンサーである。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
水無田気流著 『「居場所」のない男、「時間」がない女』 日本経済新聞出版社 1,300円+税
日本のサラリーマン家庭は大きな二つの貧困問題を抱えている。一つは女性の時間の貧困である。昔に比べ、家事は電化製品の普及によって省力化されているはずである。しかし家事・育児も含めた総労働時間は男性よりも長い。洋の東西を問わず母親が忙しくなるばかりである。「暇な主婦」は幻想である。ようやくランチタイムにカフェで寛ぐ主婦たちを見て、暇でいいよと考える男性がいるが、それは間違いであり、「昼間から暇」なのではなく、「昼間の、子供が学校などに行っている間だけが唯一の休憩時間」なのである。給料をもらって働く有償労働と家事の無償労働を合わせれば、日本人女性の労働時間は長い。
もう一つの問題は男性の関係貧困である。日本人男性は仕事以外の、地域社会や家族などの私的な人間関係が極度に乏しい。OECDによれば日本人男性は労働時間が長く、サークル活動に参加した経験がある男性は16.7%しかなく、仕事しか知らない。「世界で最も孤独」であるとしている。

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