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国税庁、タワーマンション過熱に規制か

少し前、都心のマンションの価格は坪200万円台であった。それが300万円台になり400万円、600万円、800万円、ついに最近目黒駅に建つタワーマンションは坪1000万円超である。

 

なぜこうなるのか?中国人もあるが、理由は明白。相続税対策がほとんどだ。20数年前のバブルの引き金も不動産だ。不動産の相続や贈与時の評価は相続税法22条に「時価」でするとしている。しかしその「時価」とは一般人の感覚でいう「時価」とはほど遠く、建物は「固定資産評価額」、土地は「路線価」である。20数年前の土地バブルは「路線価」の3倍か4倍が土地の取引価額(時価)であったことから、預金を1億円持って死ねば1億円に相続税がかかるが、その1億円で土地を買って死ぬと、3000万円の評価となるから、節税効果抜群となり全国のあちこちで土地買収が殺到した。モノの「時価」に対して相続税がかかると条文に書いてあるが、まったくウソである。国税庁のいう土地の「時価」とは役所が作る「路線価」である。「路線価」は「時価」ではない。その差額を利用しての土地バブルであったのを、財務省も国税庁も学習していない。そしてまた20数年後、同様の事態が生じた。

 

マンション一室の相続税評価額は建物部分の「固定資産税評価額」と土地部分の「路線価」の合計額だ。したがって建物部分の評価は1坪あたり、赤坂であろうと名古屋であろうと、青森であろうと大して変わらない。土地部分は、赤坂は高いであろうが、マンション敷地は一室あたり2.3㎡もあれば十分だ。そのため高層のタワーマンションは、その販売価額と相続税評価額に大きなかい離が生じてきた。また1階も40階も1坪あたりの相続税評価額は同じだ。ただ現実に眺望などから上層階ほど販売価額が高くなるので、上層階ほど相続税対策となる。最近のタワーマンションは時価と相続税評価額に約7倍の開きがある。1億円の販売価額のマンションを買えば、相続税評価額は1500万円という具合だ。

 

このため、先ほどの政府税制調査会の会合でも、これが指摘された。国税庁もこうしたタワーマンション節税について規制の検討をしている。しかし、また小手先の規制に終わるだろう。根本的な問題は、世間が考えている「時価」と国税庁等が考えている「時価」に差がありすぎるのである。国税庁の「路線価」は世間の時価とはズレすぎているのを自覚しなければならない。世界のどこに、道路(路線)に価額をつけている国があろうか? TTPもいいが、いつまでも「お上」感覚であってはならない。「お上」が時価を決定するのではない。

 

アメリカの場合は相続が発生した場合、土地の評価はどうするのか。評価書(Appraisal Value)を不動産鑑定士に依頼して評価する。同様にIRSも不動産鑑定士に依頼するから、評価が一致しない場合が多いが、そこは論争である。納税者にとって余分な金がかかるから、はじからIRSに不動産鑑定士を紹介してもらう手もある。しかしIRSからの不動産鑑定士の評価を否認されるケースも多々ある。おかしな話である。裁判で争うように時価の論争は凄い。一方、日本では時価の論争とはほど遠く、この宅地は広大地に該当するのか、間口距離や奥行距離はどれくらいか。不整形地か、あるいはアパートだから建物の評価は3割引けるのか、などである。日本の不動産評価は「お上」が決めた路線価に固定資産税評価額、それに借地権割合と借家権割合でほぼすべて決まる。時価の論争は皆無である。珍しい先進国ではある。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
水次洋子著 『野茂英雄から20年「メジャー記者の取材ノート」』 ゴマブックス 1,350円+税
著者の取材分野はメジャーリーグを中心とした米スポーツ。日本のプロ野球界から海を渡ってメジャー移籍し、今年で20年。本書は記者が書きため保管してきた取材ノートから選手たちの印象深い言葉のなかから特に選んだものだ。当時サンフランシスコの旧球場であったキャンドルスティックパークで野茂はメジャー初マウンドに立った。そこには多くの日系人や日本人駐在員が詰めかけ、日の丸の旗も多く見られた。5回、91球無失点、インタビューの最初の言葉は「メジャーの試合で実際に投げられて本当に嬉しい。これをずっと夢見てきて、夢がかないました」と。また松坂大輔はメジャー初登板のあと「結果には満足しています」。メジャー初本塁打を放った松井秀喜は「333本目ではなく1本目です」。ニューヨーク・メッツのスタメンで初の4番を任された新庄剛志は「オレが一番びっくりした」。メジャー15年目を迎えたイチローは「バットが杖に見えないようにがんばります」。その他、カージナルスの田口壮がリーグ優勝決定シリーズ第2戦のヒーローとして英語で会見した会見録など一気に読める。

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