☆ 今週の推薦図書 ☆
渡邊頼純著 『TPP参加という決断』 ウェッジ 1,000円自民党もTPP参加には意見が分かれている。しかし、安倍首相はとにかく交渉参加し、農業5品目の例外もふまえ前向きに捉えている。この著は日本の将来目指すべき道はTPPへの参加であり、それが強い日本を取り戻すためでもあると力説している。TPPに参加しても日本の農業は潰れないし、食の安全も守られる。ちまた言われる医療保険制度が崩壊。公共事業が外国企業に取られる。アメリカの陰謀。これらはすべて間違いである。TPP参加はさらなる日本の強い経済を取り戻すとしている。
正式にはキプロス共和国。トルコの南の東地中海上に位置する小さな島。人口わずか87万人であるがEU加盟国でもある。
今、この小国が金融危機で騒いでいる。EUに対して、キプロスの金融危機回避のため金融支援を要請。そのためキプロス議会は、EUなどからの支援の条件である自前の財源調達策として「連帯基金」設立や銀行の強制再編を行う法案を可決したが、EUはこれではおさまらず、キプロスに100億ユーロ(約1兆2400億円)の支援を行う条件として、何と銀行預金税の創設を要求したのだ。
預金課税とは、預金している者から一定税率を国が取る。つまり、預金者にとっては、利子に課税されるのではなく、元本の何%を取られるのである。EU側はとりあえず、9.9%の銀行預金課税を求めた。キプロスにある銀行預金は全額で680億ユーロ(8兆5000億円)であり、とりあえずの預金課税が実施されれば、約1割の67億ユーロ(8300億円)の手元資金がキプロス政府に入り、100億ユーロの支援要請の内、3分の2が自前で賄えることになる。
しかし、預金課税というのは国民財産の収奪である。まさにヒットラー並の強権であるが、このEUの要求に対して最も怒ったのは、実はキプロス政府ではなくロシアの首脳陣であった。ロシア政府はEUの要求に対し「他人のお金をかすめ取るのか」と。
ここで、世田谷区の人口ほどしかないキプロスの生業について触れておこう。キプロスはイギリス連邦加盟国であり、地中海の美しい海に浮かぶ屈指のリゾート地であるが、それはキプロスの表の顔である。裏の顔は、世界で最も課税が低い租税回避地(タックスヘイブン)であり、マネーロンダリングでは世界では知る人ぞ知る国なのである。だが、ケイマン諸島やガンジー諸島と異なり、欧米人や日本人はほとんどこの国を利用していない。それでは、どの国が利用しているのか?ロシアである。正確に言えば、ロシアの政府関係者や大企業のオーナーなどである。ちなみに、キプロスにある銀行預金の3分の1はロシアの富豪だと言われている。大手企業のほとんどはキプロスに持株会社を設立し、キプロス経由でロシア本国の企業に投資をする。かつてフィナンシャルタイムズ紙も、ロシアの富裕層や権力者が架空取引や汚職、不正取引で蓄えた資金をキプロスに移し、あるいはキプロス経由でマネーロンダリングして海外に移す「不正資金」の温床となっていると指摘している。
EUの預金課税にプーチンやメドベージェフが怒ったのは当然であろう。キプロスに預金課税を求めたドイツのメルケル首相の真意は、実はロシア首脳の個人資産を叩くためであったろう。中国の首脳は個人資産何千億円をアメリカに預金(これはニューヨークタイムズが書いている)、子をアメリカに留学させ、蓄財を図る。欧米の政府首脳もほとんどが富裕層の仲間入りである。サルコジ前大統領は不正蓄財を早くもあばかれている。海外は権力=資金であるが、日本の政治家の何と潔癖なことか。これには感心する。逆に金持ちの痛みを知らないから、今後ますます所得税や相続税の増税を行なうことは想像するに難くないだろう。