私は明日からまたアメリカである。アメリカは今、トランプの大統領出馬をめぐって芸能界的騒ぎで、街のあちこちの話題にのぼっているという。そして最近アメリカでは、中国に対しての関心が薄れてきていて、この前の習近平訪米も、アメリカ国民はほとんど無視。しかし中国本土では経済が冷えつつあり、大気汚染が問題になっているが、中国の外国進出意欲は衰えを見せない。
ウォール・ストリート・ジャーナル誌によれば、中国の大手銀行がアメリカへの進出を活発化している反面、アメリカとの摩擦、軋轢も大きくなっているとした記事があった。イタリアの高級ブランド“グッチ(GUCCI)”を傘下に持つKering社は、グッチの製品の偽造商品を専門に扱う組織がBank of Chinaに口座を持っていることを突きとめ、裁判所の召喚状を出し、口座情報を開示せよと要求したが、現在、Bank of Chinaは一切この要求を無視している。
アメリカの裁判所はBank of Chinaに対し繰り返し口座情報の開示命令を出しているが、中国側は、そのような開示をすることは中国の国内法に抵触するとか何んとか言って、応じる気配はない。もともと中国は共産党一党支配で法律などあってなきがごとし、三権分立でもなく、偽物作りに関しても罪悪感が希薄な国である。そのような国にアメリカが何を言おうと、馬耳東風であろう。アメリカの裁判所にとっても中国に対しての開示命令は初めてのことであるので、戸惑っているのは間違いない。
ただアメリカ国民が見ているのは、このケースで、今後中国のSecrecy Lawにどれだけアメリカ政府がメスを入れられるのかである。グッチの偽造組織のカネがBank of ChinaのNew York支店とChase Bankを経由し、Bank of Chinaの中国本土の口座に資金が行き来しているということで裁判権がアメリカにあると判断し訴訟が起きている。Bank of Chinaはアメリカが主張している中国の口座はアメリカのビジネスに何の関係もないのでグッチは中国の裁判所で偽物に関して裁判を起こすべきべきだと言っているが、中国で裁判を起こせば結果は火を見るよりあきらかであるので、グッチはそれをしない。さらにBank of Chinaの中国人弁護士は、中国は中国国民の口座の安全を守らなければならないと、わけのわからない主張を繰り返している。これではマネーロンダリングも適法になるかもしれない。(続く)
☆ 推薦図書 ☆
常井健一著 『小泉純一郎独白録』 文藝春秋1月号 861円+税
この著者は「小泉進次郎の闘う言葉」(文春新書)を書いたので記憶にあった。総理を辞めてから、初めての単独インタビュー。原発反対の理由などでは、絶対安全な機械なんて世の中に存在しない、から始まって読み応えがある。経産省の圧力に皆負けているから今の原発があり、議員も「選挙に弱い政治家は圧力に弱い」と名セリフを言っている。原発問題ではかつての部下の安倍首相を強烈に批判したが、安倍は小泉政権下で官房副長官、党幹事長、官房長官へ、そして総理と駆け昇ったが、「小泉さんは自分が育てたという意識はありますか」の問いに、「適任だからしただけだよ。物怖じしない。でも育ったのは自分、三回生でありながら幹事長を務めてよくやった」「派閥がなくなったから教育できないのはウソ」「親の背中を見ながら子が育つように、人の動きを見ながら自分で学ぶ。それが出来るかどうかの違いだよ。誰かが育ててくれると期待したらおしまいよ」。とにかく人生の為になった。