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トランプ大統領候補の節税対策~その3~

トランプの所得税の確定申告書がいまだにアメリカ国民に開示されていない。アメリカ大統領選で候補者が自身の確定申告書を明らかにしなかった初めての例である。アメリカの法律では開示する義務はない。舛添前都知事の湯河原の別荘行きの公用車使用や絵画購入、家族との食事代など公的資金からの支出は違法ではない、というのと同じと考えるべきであろう。トランプは今年2月25日の候補者間の討論会で、最近、毎年IRSの税務調査が入っていて開示できないと述べている。その後は、調査が行われるのは自分の会社の大きさのためだとも述べている。

 

最近、トランプの顧問弁護士事務所、Morgan, Lewis & Bockius LLPでの公的資金からのレターでは、トランプは申告書を開示しないとは言っていないと、元IRS長官(国税庁長官)のMark W. Eversonは述べている。3月7日付のレターによれば2002年~2008年の税務調査は終了し、追徴課税は一切発生していないとしている。だから元IRS長官は2002年から2008年のトランプの確定申告書は開示すべきであると言っている。開示しない理由はただ一つ、彼の選挙運動に大きなマイナスが生じるからだと。トランプの元キャンペーンマネージャーは「トランプの確定申告書から何も学ぶものはない。2015年の彼の収入は5億5700万ドル(約600億円)だ。“Fight for every single dollar”だ」とも言っている。

 

ジョージワシントン大学の税法専門家のNeil H. Buchanan教授によると、トランプが確定申告の期限の延長(日本にはこの制度はない)をしていれば、2015年の申告期限は今年2016年10月15日になるので、まだ申告もされていないし税務調査も受けていないはずである。となれば、確定申告書はその後開示できるのではないか。2014年の確定申告書は昨年、期限の延長をしていれば、昨年10月15日までに申告しているとしても、まだIRSは税務調査には入っていない。そうであれば、2014年の申告書の開示はできるのではないか。果たして、なぜトランプは拒むのか。

 

その謎解きは「寄附」である。昨年末、フェイスブックのザッカーバーグの5兆5000億円の寄附金について書いたが、自分の作った財団や学校に寄附をしても一定の基準を満たしていれば、アメリカの場合、全て寄附金控除で落とせる。トランプの確定申告書を開示すれば、驚くほど税金を払っていない事実に直面するはずである。これだけ毎年、税務調査が入るのは、アメリカでは毎年の節税策が行き過ぎているかの瀬戸際作戦がとられているのではないか?というのはアメリカのメディアの見解である。

 

トランプを通してアメリカの税制度、アメリカ人の税に対する考え方などを伝えればと思い、次のブログもトランプでゆく。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
日高義樹著 『トランプが日米関係を壊す』 徳間書店 1,500円+税
著者は有名な元NHKワシントン支局長。今年で80歳だ。トランプは過激な発言を繰り返すが、多くのアメリカ人から支持される理由は、アメリカ人の政治に対する不満がある。トランプはアメリカ人の仕事を奪うメキシコ人の不法移民を一人残らず追放せよという。今後、不法入国するメキシコ人を阻止するために、メキシコ政府の費用で、メキシコとの国境に高い塀を作るべきだと主張しているが、国際的な常識からすれば大きくズレている。しかし人気があるのは、普通の政治家が発言できなかったことを明確に主張していることである。さらにオバマ大統領の中途半端な中東政策に対しても厳しい発言がある。ISに対して、アメリカ空軍の卓抜した攻撃力からすれば、ISを徹底的に潰して、シリアを石器時代に戻してしまうことも可能であるとしている。
トランプは、政治経験が全くない。アメリカ大統領は経験として、州知事か上院議員で政治を学ぶ。彼はニューヨークの軍事大学卒であるが、その後、ペンシルベニア大学のビジネス大学院ワートンに入りビジネスを勉強したとある。ワートンはハーバード大学を超えるビジネススクールで、軍事大学とワートンが彼の自信過剰とも思われる発言や行動を作ったとしている。
日米関係について、彼のこの発言がアメリカ人の共感を誘った。「なぜアメリカが日本を守らなければならないか。アメリカが中国やロシアと戦争を起こした場合に、日本は一緒になって戦うのか」

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