日本の確定申告書提出期限は3月15日、アメリカは4月15日、両国ともその季節は終わった。大統領選挙期間中、慣例であった大統領候補の確定申告書の公表を、初めてトランプが破った。全く明らかにしなかった。このブログでも何回か書いたが、その理由についていろいろ憶測されたが、遂にアメリカのメディア(テレビ局)によって明らかにされた。
それによると、トランプは2005年に1.5億ドル(170億)の所得がありながら、払った税金は3800万ドル(42億円)、税負担率は25%でしかなかった。しかも実際に節税対策をしたら、530万ドル(6億円)の税金で済んだということである。これは代替ミニマム税を適用しなかったからであり、トランプの公約は、この代替ミニマム税の廃止を訴えている。
そもそも代替ミニマム税(Alternative Minimum Tax = AMT)とはアメリカにしかない税制度である。日本は租税特別措置法というのがあって、減税措置を盛り込んでいる。アメリカは日本の比ではなく、それらを全て適用することによって納税額がゼロになるケースもある。そこでアメリカも、そのようなことを許していたら高額所得者の納税額がずっとゼロになるのを防ぐため、加速度償却や非課税利子など、さまざまな減税措置を適用しなかった場合に納めなければならない税金の額をきちんと算定する。
例えば、普通に所得を計算すれば10億円であったとしよう。そして、その所得税が5億円。しかし措置法の特例を全て適用すれば所得は2億円になり、その所得税額は8000万円まで減少した。しかし、この者の納めるべき税額は8000万円ではなく、10億円-2億円=8億円所得が減った額のうち26%か28%を乗じて、8億円×26%=約2億円が代替ミニマム税といわれる追加税金となり、8000万円+2億円=2億8000万円が最終的に納付する税金となる。
トランプ大統領の場合、今まで明らかにされなかったが措置法を適用せず、報道機関の情報によりかなりの税金を払っていたのである。しかし、ホワイトハウスは多額の税金を払っていた事実よりも、問題なのは、この資料が盗まれたものであり、しかも一般に公開されてしまったことにある。MSBCテレビをはじめ不誠実なメディアが今後ともこの種の暴露情報を流し続けるであろうが、大統領としては税制改革を含め、アメリカファーストとなる施策を今後とも推進していく方針に変わりがないとコメントしている。トランプもだいぶおとなしくなったようだ。
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この著者 副島氏は、「日本政府が資産家に世界でも類をみない重税を課している。しかも小金持ちといわれる総資産5億円~10億円の者たちを相続税で追い詰めている。特に中小企業オーナー経営者が狙われている」という。そのため彼らは海外に資産を移転する方法を取ったが、海外に資産を5000万円以上有する者に対し「国外財産調書」にその海外資産の詳細を記入することを義務付け、違反者には何と最高1年の懲役刑まで導入され、さらに海外に移住する者に対しては、1億円以上の有価証券(非上場株式を含む)を保有する移住者は、出国時にその株式等を時価で売却したとして、その売却益にかかる税金を納めてから海外に行けという「出国時課税制度」まで創設された。また、日本の国税庁はOECDの加盟国に対して、タックスヘイブンからの金融情報も得られるようにした。このようなことから、超重税国家日本から逃れるのは国外脱出しかない、マレーシアやタイなどが移住先として紹介されている。