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国税庁、査察の事績を公表

国税庁は、このほど脱税の大口事案を発表した。今回のブログは久しぶりにドメスティックオンリーとする。

 

平成28年度における査察の着手件数は178件、このうち132件を検察に告発した(告発率68.4%)。脱税総額は126億9200万円となった。また、消費税率が8%となった後、金塊の密輸も頻繁になったように、消費税の不正還付事件が後を絶たなくなった。一つの事例では、高級腕時計の輸入販売を行う3社は、3社のグループ基幹会社の在庫商品である高級腕時計を利用し、国内仕入れと仮装して架空の課税仕入控除を行った。さらに高級腕時計を国外関連会社に持ち込み、架空の輸出免税売上に仮装して申告し、不正還付を受けていた。同じ高級時計の在庫品を何度も国内と国外でキャッチボールして仕入税額控除、輸出免税を受けていたというから悪質だ。なぜバレたかというと、国税当局はデジタルフォレンジックツールを使用して、削除されたデータを復元することによって、この不正を解明した。脱税額は6億1000万円。

 

次に、脱税した金をどこに隠匿していたか。福岡国税局では押入れの中の床が、あたかも舞台装置の“セリ上り”のように、リモコンで上下する装置を開発し、床下の隠された金庫に現金1億6000万円が隠されていた。また、大阪国税局では自宅に蔵があり、その蔵の中には先祖代々の古いものが収納されていたが、埃を被った段ボール箱の中に現金3億4400万円が隠されていた。関東甲信越局では事務所の商品搬入用エレベーター、壁の隙間に5500万円が隠されていた。

 

昔と異なり、日本では、法人の利益を圧縮するより、消費税をごまかす方が実利に適う。利益を圧縮することを考えても、もともと利益はそんなに出ていない。利益が出ていても利益率が2~3%がいいところだ。それなら売上の8%となる消費税をごまかした方が良い、という考えを持つ輩が蔓延る。消費税は法人税と異なり、預り金、公金である。したがって罰も重い。28年度中に一審判決が言い渡された100件のうち、全てに有罪判決が出され、そのうち実刑判決が14人に出された。そのうち最も重いものは懲役14年だった。

 

節税対策は素人が考えるものではなく、優秀な税理士に依頼しなければならない。これらの脱税事件からの教訓でもある。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
加護野忠男編著 『松下幸之助』 PHP研究所 2200円+税
松下幸之助ほど死後も多くの著書で語られる経営者はいない。毎月何冊か新書が出ているほどである。この本は、出版社もPHP研究所で、そのど真ん中の発行であり、日本の企業家のシリーズで、しかも神戸大で有名な加護野忠男氏の編著である。PHP研究所創設70周年記念出版で確かに力が入っている。
「赤字は罪悪」「見えざる契約」「共存共栄」「生成発展」、幾多の至言に彩られる松下電器創業者の事業創造の足跡をなぞる。この本は「経営の神様」と称された幸之助の「経営戦略」と「経営理念」の関わりに焦点を合わせ編集している。
特に会長職にあって、経営危機を察知した幸之助は、卸売業を営む販売会社・代理店の社長たちを集め、三日間かけて開催した「熱海会談」の直後、営業本部長代行として現場に復帰する。当時、業績の悪い販売会社・代理店を切り捨てる手法をとった場合、松下の経営はすぐに良くなったかもしれない。しかし幸之助は、そのような戦略をとらなかった。「共存共栄」の理念の下で「決断」された。幸之助は「切り捨てる」のではなく、「共に努力して戦いましょう」である。
この書は、かなり高度の経営学的見地から書かれた幸之助論であり、今なお経営者にとって参考になる。

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