国税庁は相続税の調査等の状況や申告状況を公表した。それによると、1年間で亡くなった日本人は134万397人、その中で相続税がかかると思って申告した被相続人は、11万1728人、なんと8.3%(12人に1人に相続税がかかる)、そして相続税を納めた相続人は24万9576人にのぼる。1994年以来、いずれも過去最高である。申告した相続財産合計は16兆円にものぼる。
結果、納めた相続税の合計は2兆185億円である。ちなみに今、消費税率が10%になるということで政府は、ポイント引換や軽減税率適用などで国民負担は2兆円で済むと言っている。1億2000万人で2兆円の負担、たった11万人で2兆円(相続税)の納税である。いかに相続税がかかる人々にとって、過酷で辛いものであるかがわかる。
一方、相続税の税務調査は1万2576件行われ、申告漏れが1万521件、申告漏れ価格が3523億円、追徴した相続税額は783億円となっている。特筆すべきは、海外関連である。調査件数1129件、申告漏れ件数134件でその額70億円、全体の申告漏れ3523億円に比べ僅か70億円。全体の申告漏れは9割に近いのに、海外関連は僅か1割しか摘発していない。私見だが、海外調査は国税当局がこれぞと睨んで1129件も調査したのに、僅か134件で総額70億円、こんなものじゃないだろう。隠蔽の証拠がつかめないのである。これでは、ますます資金の海外逃避が増えるのではないだろうか。
☆ 推薦図書 ☆
増本康平著 『老いと記憶』 中公新書 780円+税
著者は心理学者。この本は、老いへの偏見をなくすために書いたとされる。高齢期の認知機能の問題で、加齢により記憶力の維持や、低下した記憶の改善など刻々と変化する私たちの記憶について、変えられること、変えられないことを見極めるために、筆者の知見を紹介している。
アメリカの神学者ラインホルド・ニーパーの言葉「神よ、変えることのできるものについて、それを変えるだけの勇気をわれらに与えたまえ。変えることのできないものについては、それを受け入れるだけの冷静さを与えたまえ。そして、変えることのできるものと、変えることのできないものとを、識別する知恵を与えたまえ」。
高齢者心理学の立場から、認知機能の変化など老化の実態を解説、気分や運動、コミュニケーションなど記憶に与える影響にも触れ、人間の生涯で記憶の持つ意味をも問う。加齢をネガティブに捉えず、老いを前向きに受け入れるヒントも与えている。