アメリカ来年度税制、大統領でこう変わる
Wall Street Journalによると2017年に税制改正が行われ、トランプ大統領は法人及び個人の減税により、2018年及び2019年の失業率の低下及び経済拡大に寄与したと、自画自賛、再当選すれば更なる減税を行うと宣言している。一方民主党は景気拡大は既に2009年から継続されており、トランプ大統領の減税政策によるものではなく、寧ろ富裕層を助けているだけだと反論している。バイデンの税制はミドルクラスに対し大幅な減税を行い、年収40万ドル(4100万円)以上の納税者に対しては増税を行うというものである。このように、税制については民主党と共和党では意見が完全に分かれており、どちらかが大統領になったとしても議会を完全に支配しない限り何も税制改革の達成は出来ない。トランプ大統領の共和党が議会を握れば減税、民主党が支配すれば増税という構図だ。
トランプ大統領は2017年の税制改革では共和党が議会では上下院とも完全に支配し、法人税については35%から21%に税率を下げるなど大幅な減税を行い、設備投資に対する控除や海外利益の本国への還流を容易なものにした。これらの減税は民主党議員の1票の投票も無く議会を通過している。一方バイデンは法人税率を28%に引き上げ、ミニマム税の導入や海外収益に対する課税率の引き上げ等を明言している。
個人の所得税については2025年までの特別措置である為、それ以降については不透明な状況だ。バイデンは年収40万ドルを境に減税と増税を行いたいとしており、最高税率は37%から39.6%へ引き上げ(日本は現在45%、住民税10%)、社会保障税を引き上げると同時に所得額13.7万ドル(1500万円)上限は維持するものの、年収40万ドル以上に対しては更なる課税を検討しているという。またパススルービジネスからの収入の20%税額控除出来る特例税法の廃止を検討しているという。一方で減税と言えば、州税及び固定資産税については現在1万ドル(100万円)までしか控除が出来ないが、この上限の廃止を検討している。これはカリフォルニア、NY州等不動産価値が高い州では大きな減税となる。
株式譲渡益課税などのキャピタルゲイン税については2017年時の税制改正時には引き下げは行わなかったが、トランプ大統領は23.8%から18.8%に引き下げを行うと提案している。逆にバイデンの計画では39.6%まで引き上げるとしているが、この最高税率は年収100万ドル(1億円)以上の納税者に適用されるとしている。更に、現行では死亡時に故人が持つ資産の未実現利益については、相続人が売却するまで実現しなく、コストも死後の市場価値に調整されるが、バイデンは、この未実現利益については、死亡時にあたかも売却されたと見做し、課税するとしている(日本と同じ)。
最近のCNBCでのインタビューでビジネス界の重鎮でありExpedia のCEOでもあるビリオネアーのBarry Diller氏は、トランプ大統領嫌いで有名なのだが、バイデンが大統領になれば、株式市場は下がるだろうと言っているが、そもそも現在の株式市場は道理をなさないとし、いすれは大幅下落するので今の内現金を蓄えよとも警告している。また、彼は、どちらの大統領になろうとも長期的にビジネスに与える影響は少ないとも言っている。大統領選挙まであと6週間ほどだが、私も新型コロナウイルス感染症の影響で渡米していないが、これほど熱気を感じないのが初めてである。来週から始まる大統領候補討論会に期待をしたいと思っている。
☆ 推薦図書 ☆ 池井戸潤著 「アルルカンと道化師」 講談社 1600円+税
私はテレビドラマを、まず見ないので知らなかったが、先日あまりにも世間が騒ぐので「半沢直樹」なる番組を1時間見た。歌舞伎役者が出演し、それは銀行の内部を半ば暴露、正義が勝利するという、筋書き自体は単純なものだった。本書は、著者が、その半沢直樹を主人公に書いた本で、読んで実にテンポがよく、最近では浅田次郎と双璧だろうと思った。本の舞台は東京中央銀行大阪西支店。主人公はそこの融資課長である半沢直樹。そこに持ち込まれる大手IT企業ジャッカルが業績低迷中である美術系出版社・仙波工藝社を買収したいという事から、この物語が始まる。この案に隠された案件を処理しているうち、半沢直樹が、やがて背後にひそむ秘密の存在に気付く。有名な絵に隠された「謎」を解いたとき、半沢がたどり着いた驚愕の事実を、さすがに見事なタッチで描いている。ビジネスで考えるとき、赤字を出している仙波の社長に、担保提供者が、「赤字を出しているという事は、その会社が、社会から必要とされていないんだ」という一言、著者の力量を見た感じだ。
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