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過去にもあった、大統領移行を渋る大統領

相変わらずトランプ大統領は選挙での敗北を認めていないが、Washington Postは過去にも似たような大統領がいたと指摘している。世界大恐慌の1932年にHerbert Hoover大統領は当時 NY州知事であったFranklin D. Rooseveltに敗北した。Hoover大統領は Roosevelt氏が推し進めるNew Deal政策に反対し、Rooseveltに自分の経済政策を推し進めるよう圧力をかけ続けたのである。今でこそ大統領就任式は1月20日だが、当時は3月4日と制定されていて、今よりももっと移行の時間があった。Hoover大統領にとっては4カ月もの間、死に体(lame duck)状態であったものの、その間様々嫌がらせを行いNew Deal 政策をやめさせ、国民の関心を自分に向けさせようと懸命にしていた。これは現在のトランプ大統領がパンデミックはもう終わりが近づいている、経済も直ぐに立ち直ると訴えているのと同じだと言っている、当時は失業率が20%を超え、銀行は次々に破綻、ドイツではヒットラーが台頭する時期と重なる。
Hoover大統領(当時58歳)とRoosevelt氏(当時50歳)の選挙後初のミーティングは11月22日ホワイトハウスのRed Roomで行われた。Roosevelt氏は Hoover大統領の経済政策に合意したかに思われたが、翌日Roosevelt氏は明確に拒否、 “It’s your onion. You can peel it until March 4.”(それはあなたの玉ねぎ(政策)だ。3月4日まで好きなだけ剥いてくれ。)と言い放った。12月に入るとHoover大統領はRoosevelt氏宛ロンドンでの経済会議は協力して欲しいという電報を打つと、Roosevelt氏はこれに抵抗し、Hoover大統領はこの電報でのやり取りを暴露し、Roosevelt氏が世界経済復興には非協力的であることを公言した。これにはRoosevelt氏も困りはて、翌年1月20日に再度会い、英国の米国債務につき、英国との会談を行うことで一致したものの、これはRoosevelt氏が正式に大統領就任後とするという条件付であった。
このようななか、2月15日にはマイアミで失業中の煉瓦職人がRoosevelt氏とシカゴ市長を乗せたオープンカーを射撃する事件が起った。Roosevelt氏は難を逃れたがシカゴ市長に命中し数週間後に死亡した。その後2月18日Hoover大統領はシークレットサービスを通じ手書きの秘密文書をRoosevelt氏まで届けさせた。この手紙にはRoosevelt氏の名前をRoosveltとスペルミスをしているが、国民は経済を杞憂し、銀行の破綻を懸念している、増税をしてもよいから均衡財政主義を取り国民の信頼を取り戻すべきと忠告している。これに対しRoosevelt氏はずうずうしい奴だとして12日間返事を書かなかった。
Hoover大統領はRoosevelt氏のことを”madman(狂人)”と呼び、New Deals政策がいかにばかげているかを示し、国民が自分を大統領として戻すだろうと考えていたようである。その後も二人の衝突は3月4日の就任式前日まで続く。就任式前日午後4時Hoover大統領はRoosevelt氏をお茶でもとホワイトハウスに招いたが、そこには財務長官、連邦銀行理事も同席させ、パニックによる預金引き出しを避けるため銀行閉鎖を行うよう迫った。Roosevelt氏はLike hell I will!” “If you haven’t the guts to do it yourself, I’ll wait until I’m president to do it.(私がやってみせよう。もしあなたに自分でやる勇気がないのであれば、自分が大統領になるのを待って実行する。)と言い放ち、Roosevelt氏はHoover氏の目にパンチを食らわせたいと語ったそうだが、その夜もHoover大統領はRoosevelt氏に電話し、夜中まで銀行閉鎖するよう迫った、
大統領就任式が行われる日は寒くじめじめした日だったが、ホワイトハウスから式場まで二人を乗せたオープンカーの中ではRoosevelt氏がHoover大統領に語りかけてもHoover氏は空を見るだけで無言でした。10万人の聴衆を前にRoosevelt新大統領はThe only thing we have to fear is fear itself(唯一恐れるものがあるとすれば、それは恐れそのものだ。)と有名な言葉を述べている。翌々日には、新大統領は4日間の一時的な銀行閉鎖を発表した。また、更に憲法改正を行う第20条修正法案を可決した。これは有名なLame Duck Amendmentと呼ばれ、大統領就任式を1月20日に変更するものであったのである。

推薦図書 ☆
山口慎太郎著 「家族の幸せ」の経済学  光文社新書 820円+税

「帝王切開なんてダメ、あんなの本当のお産じゃない。落ち着きのない子に育ちますよ」「赤ちゃんには母乳が一番。お母さんの愛情を受けて育つから、頭もよくなるのだよ」「子どもが3歳になるまでは、お母さんがつきっきりで子育てしないとダメ。昔から、三つ子の魂百まで、っていうでしょう」このような科学的根拠を一切無視した「思い込み」が幅を利かせている。これら親身になったくれる人はありがたいが、間違っていることを、あなたが取り入れる必要は全くない。
この本は経済学的見地から、データ分析でわかった結婚、出産、子育ての真実を書いている。出産、子育て、などで何が「真実」で、何が「神話」なのか、かつて安倍首相は育休3年制を唱えたが、果たしてそれが正しかったのかなどを検証している。また子を持つことが果たしてメリットなのか、この子育てにかける時間を金銭的に評価した費用なども経済学的見地から書いている、面白い本である。

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