少し前のブログで「徴収共助」なる専門用語を解説した。国際条約で税金の滞納で差し押さえることが出来るのは自国内にある財産だけである。税金を滞納している者が、財産を差し押さえられるのを回避する目的で、自分の財産を海外に逃がす。そうすることによって、自分の財産を安全に確保。しかし、そのような不埒なものが世界中にいることがわかって、国際的にそうした税逃れを防ぐ目的で「徴収共助」制度が出来た。実際、日本で滞納している者が、韓国に財産を移転し、日本での財産を空にして滞納税金を免れたものの、国税庁から、韓国に依頼してその者の韓国財産を韓国政府に差し押さえてもらい、解決した。
今回解説するのは、これまた専門用語で「第2次納税義務」、これは滞納者が財産をある者に贈与して、自分の財産が無くなった場合、国税当局は差し押さえできる財産が無いことから、その財産の贈与を受けた者に滞納税金を納めさせる、受贈者は税金を滞納していないが、滞納している贈与者に変わって滞納税金を納める義務がある、これを「第2次納税義務者」という。悪い奴はいるもので、滞納者から贈与を受けた者が、その財産を海外に移転した場合、よくあるのは海外の銀行に送金した場合だ。この「第2次納税義務」はあくまで国内財産に限られるのだ。国内財産を贈与され、それが国外財産に化体されていれば「第2次納税義務」を課すことができない。さらには「徴収共助」制度も対象外なのである。指をくわえて見ているだけなのである。そのため最近では国外財産を配偶者に贈与して「第2次納税義務」を免れている例が多くなっている。死ぬ間際にそんなことをされては相続税などお手上げである。何らかの措置が必要なのではと思うが、この種の海外がらみはいつも対応が後手、結果悪い輩が得をしている日本である。
☆ 推薦図書 ☆
外山滋比古著 「老いの練習帳」 朝日新書 790円+税平常心で、ゆっくり急ぐ。「わたしはこうして歳を重ねた」95歳現役賢人が薦めるとっておきの日常作法。として紹介されている本である。人生100年時代がやってきている。老いるのにもコツがある。古代ローマにアウグストゥスという皇帝がいた。名君で、折に触れてFestina Lente(ゆっくり急げ)を口にした逸話が有名で、いまでも、この句を刻んだ碑を町じゅうに見ることが出来る。「ゆっくり急げ」は「急がば回れ」とは違う。むやみに急いではいけない。だらだらしてはもちろんいけない。平常心を失うことなく先を急ぐ、という心である。矛盾する二つを結びつけることで中庸の妙になる。なかなかの知恵である。著者はこうして年を重ねた。新しいものはとかく古くなりやすいが、古いものはもう古くならない。なぜなら時間がきえるから、これからも、ゆっくり急ごうかと。