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塩野義製薬、ケイマンLPSで国税庁に勝つ、東京高裁

少々複雑で恐縮。この事件は、数年前、塩野義製薬が医薬品の共同開発を行うために、ケイマンLPSを現地に設立した。その医薬品の開発は、さらにそのケイマンLPSがアメリカ、デラウェア州に設立したデラウェアLLCが行っていた。塩野義製薬はイギリスの塩野義製薬完全子会社にそのケイマンLPSの持分を現物出資したのである。話を複雑にしないため、解説すると、ある会社に出資するとなると一般には現金で行う。それを現金ではなくモノで行うのを「現物出資」という。例えば土地を現物出資すると、土地の時価で出資したとみなされ、仮にその土地が時価1億円だとすると、1億円出資したことになるが、出資したその土地を3千万円で購入していたとなると7千万円の譲渡益となり譲渡益課税がなされる。しかし、それでは売却したお金も入っていないのだから、条件を満たせば譲渡益課税は繰り延べるという税法上の措置がある。それには条件があり、通常、「適格」に該当すれば課税されない。今回、その中の一項で塩野義製薬と国税局が争った。「外国法人に、国内にある事業所に属する資産(国内資産)」を現物出資したのなら「適格」に該当しないのである。現物出資したものはケイマンLPSである。国税局はそれは国内資産だと言い続けた、塩野義製薬は海外資産だとした。東京高等裁判所はケイマンLPSの持つ事業用資産は①各パートナーからの出資に由来する現金 ②塩野義製薬及び米国デラウェアの会社から提供された知的財産のライセンス ➂新薬開発に伴う治験データの無形資産 ④デラウェアLLCの実体 これらの事業用資産は日本以外の地域に有する事業所において経常的に管理されていたと認められるとして、国税局が言う国内資産とは認められないとして退けた。国税局はなぜ国内資産と言い張ったのか、裁判記録からすると、こうだ「ケイマンLPS出資持分取得から本件現物出資に基く喪失に至るまでの間、塩野義製薬本社の投資有価証券台帳に投資有価証券として記載されていたことから、塩野義製薬本社が経常的に管理していたことは明らかである・・・」台帳に記載されていたから、本社で事業を行っていた。考えられない幼稚さである。情けない。1審、2審とも国税が負けた。当たり前であろう。最高裁までは行かないであろう。これでは公判は維持できない。最高裁も書類で却下であろう。このように巨大日本企業の塩野義製薬、武田薬品、トヨタ、パナソニックなどは世界のあちこちに現地法人がある。オランダや。ケイマン、デラウェア州などを絡めた節税策に、国税当局はついてゆけないのである。国際部の税務職員といいながら、外国に英語で問い合わせが出来る職員はいないのである。新幹線車内で車掌が英語でアナウンスする程度の語学力では、これらの企業に太刀打ちできない。

☆ 推薦図書。
橋田壽賀子著 「ひとりが、いちばん!」 大和書房 571円+税
私は橋田壽賀子さんとは一度だけお会いした。それも、ある人の葬式だ。彼女はそこで短期間アルバイトをしたので、その会社の当時の社長のお悔やみに来たのだと、隣の私に話してくれた。そのような人がいるのかと、驚いたのが、今も印象に残っている。この本は70代後半に書かれたもので、日常はシンプルに、義理のお付き合いはなし、無理せず気楽に一人で暮らす。彼女は「おしん」で、それこそ世界的に有名になったが、本の終りに近いページでこう書いてあった「主人公のおしんは苦労の果てに、スーパーチェーンのオーナーになり経済的には成功します。そのうえで「果たして自分の人生はこれでよかったのか」と疑問を抱き、過去を振り返る旅に出ます。あの物語はそこから始まっているのです。私が描きたかったのは、「経済的豊かさばかりを追求するのではなく、身の丈に合った幸せというものを考えようではないか」という事だったのです。ご飯をお腹一杯食べることもできず、学校にも行けず、たった米一俵で奉公に出されるという時代の話は、それほど大昔のことではありません。ドラマに出てきた人たちが、その後の日本をつくり、繁栄の礎を築いてきたのです。おしんの時代を生きた人たちがいたからこそ、その後があるのです。放送後にやってきたバブルで浮かれることもなかったのです。今たとえリストラで給料が二分の一になったとしても、生きていくことは出来ます。体を張って生きようと思えばどうにかなる。つまらない体裁にこだわっているから前に進めないのです。自分で前に進めないだけです。自分で前に進もうとしていないからです。待っていたところで誰も手は差し伸べてくれません。自分で自分を守っていかなければ、いったい誰が守ってくれるのでしょう」
身の丈に合った暮らしをせよ、他力本願でない生きがい。生前、著者が自分自身の体験を通して一度きりの人生への熱いメッセージを伝えている。

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