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国外財産調書制度とCRS

日本の国税庁の職員約5万5千人のうち、相続税などの資産税担当税務署員は3800人といわれる。富裕層の方々は最近、税務署から海外資産についてのお尋ねが多くなったと感じられれると思う。実際、実にその調査が多い。昨年の税制改正により、税務調査の際、国外財産調書に記載すべき国外財産の取得、運用や処分に係る書類を税務署から求められ、これを一定期間に提出しない場合は、加算税の加重措置がさらに5%上乗せされ、軽減措置は受けられないことになった。最近の調査では、海外資産に記載した有価証券について、個別銘柄が記載していないなどで、文句をつけられている納税者が多くなったと言われている。
CRS(Common Reporting Standard)は海外の金融機関を利用した国際的な租税回避に対処するため、自国から見た非居住者の口座情報を、自国の税務署から、非居住者の居住地国の税務署に報告するシステムで、お互いの国の税務署通しの便利な制度が構築された。現在では世界の非居住者の情報が察知でき、事実日本では約47万件の情報を64か国の外国に提供し、反対に189万件の日本人の情報が国税庁に提供されている。国税庁はこれらの提供資料にもとずいて相続税の調査を行った結果、149件の申告漏れがあり77億円の無申告資産があったという。私に言わせれば、たったこれだけか、「大山鳴動して鼠一匹」とはこのことである。労多くして、ほとんど取るものの無い税金。兎にも角にも、追徴課税が出来ない最大の原因は、アメリカ合衆国がCRSに加盟していないことであろう。そのくせアメリカ合衆国はFATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)など自国民の海外資産を把握する厳しい法律を制定している。誠に勝手な国ではある。

☆ 推薦図書。
青柳碧人著 「むかしむかしあるところに、死体がありました。双葉社 640円+税
全くの小説である。仕事に疲れて、面白くもないテレビもつけたくない時、水割りを飲みながら読む、絶好の本である。しかしこの著者は数々の年間ミステリーにランクインし本屋大賞ノミネートを果たしている。短編だが「一寸法師」「花咲じいさん」「鶴の恩返し」「浦島太郎」「鬼ヶ島」の5編をミステリに仕立て、例えば、心優しい花咲か爺さんはなぜ殺されたのか、その時、次郎は? 鶴の織った反物が高く売れた後に青年がとった行動とは? 桃太郎が鬼に勝ったが、そこから始まった本当の戦いとは? などなど・・お笑い番組よりはるかに教養を豊かにしてくれる一冊である。

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