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今年予想される、国税庁、最高裁での敗訴

相続財産の評価を行うにあたって、相続税法では、その財産の「時価」で行うとある。普通、時価とは、例えば不動産だと、不動産鑑定士による評価を思うが、国はそれを原則認めていない。日本の不動産の時価は、土地であるなら国が定めた「路線価」評価、家屋も「固定資産税評価額」でしなければならない。借地であれば、国が定めた「借地権割合」借家であれば、国が定めた「借家権割合」を基に評価しなければならない。
つまり日本中の不動産は①路線価②固定資産税評価額➂借地権割合④借家権割合 の4項目でどんな不動産でも相続税評価額が決まる。賃貸不動産などは、借地権割合や借家権割合を駆使すると驚くほど評価が落ちる場合がある。そこには不動産鑑定士や不動産業界の入る余地がないのである。従ってこの土地にアパートを建てれば、地主が死んだら、相続税評価額はいくらになって相続税がいくらかかるのかは、すぐわかるのである。賃貸不動産の所有は驚くほど評価が下がる。積水ハウスや大和ハウスなど住宅メーカーは、これらを武器にして大きくなったといっても過言ではない。

ところがである、ある富裕者が亡くなる3年半前に10億円を銀行から借入し、8億3千万円の賃貸不動産と5億5千万円の賃貸用不動産を購入した。そして亡くなったが、いろいろな相続税の計算をすると借金は引かれるので、何と相続税額が「ゼロ」になった。国が定めた財産基本通達に忠実に乗っ取って申告したのである。その後9か月後相続人はその一つを売却した。
ところが税務署は、これらの行為は相続税額対策のために行ったので、財産評価基本通達により評価すべきでなく不動産鑑定評価によるべきだとして時価評価し12億7千万円が不動産価額(
申告は3億3千万円)として申告額となんと10億円近くの差がついた。裁判では「財産評価基本通達の評価方法を形式的に適用すると、借入金で賃貸不動産を購入して相続税対策を行わなかった他の者との間で、租税負担の公平性を欠く・・・」として一審、二審とも納税者側が負けた。

しかしこれはおかしい。財産評価基本通達は国会を通過した「法」ではない。国税庁が勝手に決めた規則である。国民がこれに従う義務はない。にもかかわらず、財産評価基本通達が独り歩きして、あたかも法律であるかのごとくふるまってきている。今回の事件は、その国税庁が、自分で決めた規則に従って申告した納税者を、けしからんと言っているのである。どの(くち)が言うのであろうか。(評価基本通達6項というのがあるが、すべて国税庁が判断するので国民には分からない).節税対策のために財産評価基本通達通り評価してもダメだと、どこにも書いていない。今年、最高裁判所第三小法廷(長峰安政裁判長)で、この裁判が始まる。3月15に弁論である。私はこの裁判で国が負け、納税者が勝つと信じて疑わない。地裁、高裁と、判決文をよく読むと、あまりにも裁判官が税法に無知である。武富士事件の件もあり、国が負けたら、それこそ新聞一面トップ記事である。目に見えるようである。

☆ 推薦図書。
稲盛和夫述 「経営のこころ」PHP研究所 1540円
この本はPHP研究所の編集長からいただいた。稲盛和夫氏の今までの著作・言動の総編集である。「経営とは、多くの物を売り、経費をなるべくかけないようにするという、その一点でのお互いの知恵の出し合いである」という氏の経営の原点がある。現在、コロナ禍で、企業を取り巻く環境が激変している。そこで経営者・会社幹部の真価が問われている。在宅勤務が多くなり、いかに社員と意思疎通をするのか、あるいは副業解禁などで、会社との心理的距離が拡大するなか、いかに企業の理念を社員と共有していくのか、いかに社員のモチベーションを高め、上質の努力を求めていくのか、難題は山ほどある。これらの問題はまさに経営の「原点」である。これらの諸問題に取り組むために、稲盛和夫氏の経営における「信念」を著した本である。
このなかで、本当に心血を注いで従業員を見ているか。言動を見聞きするなかで、全部見抜いて行って、最終的な評価をしているか。「ルールに従って」ではなく「どこまで見ているか」が結局は、人を評価する決め手になる。と、けだし名言である。

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