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富裕層を襲う「財産債務調書」の記載事項

国税庁は「重点管理富裕層プロジェクトチーム」略して(富裕層PT)を立ち上げ、資産5億円以上所有の富裕者及びその家族の財産の移動や所得を重点的に追っている。サッカーのマンツーマンディフェンスではないが、生前贈与や隠し資産、隠し所得がないかどうか、税務署員を特定の富裕者に割り当てて監視しているのだが、なんだか中国政府当局の「国家転覆罪」の監視のようである。
確定申告では所得の申告に加え「財産債務調書」なるものを提出しなければならない。これはその年分の所得が2000万円以上かつ財産が3億円以上のものが対象だが、その他、それに該当しなくても国外にある財産が5000万円以上あると提出しなければならない。さらに1億円以上の「国外転出特例対象財産」つまり有価証券(上場、未上場を問わず)を1億円以上持っていると提出しなければならない。中小企業のオーナー経営者がそれに該当するものも多いであろう。これはシンガポールなどへ富裕者が相続税の無い国に移住して節税するのを防ぐためである。これらの書類、明細書を毎年税務署に提出させることで、財産の移動を把握するのである。今年の税制改正でさらに所得が無くても財産が10億円以上ある者も「財産債務調書」を提出義務化された。これは所得を2000万円以下に抑えることで「財産債務調書」の提出を免れてきたものを一網打尽にする。富裕者の多くで「配当所得」がいくらあろうとも源泉分離課税で申告をしなくてよい者が多くいて、彼らは給与所得や不動産所得を2000万円以下に抑えるので国税当局は把握できなかったので、令和5年からそのような人をあぶり出し、新たな富裕層PTの囲い込みに入る。
ところでアメリカのIRSで大問題になっているのが仮想通貨、今では暗号資産と呼ぶが、ビットコインやイーサリアムなどの通貨、これは銀行預金などと違い、なかなか把握できない。アメリカでは暗号資産を使った所得税逃れを補足しようと躍起だが、日本でも同様だが国税庁は暗号資産を所有している場合は「財産債務調書」の「その他の財産」に種類別、用途別、所在別に記入せよと発表した。もともと暗号資産はどこの国の発行通貨でもなく、どこに所在しているかもしれない、ブロックチェーンで守られているだけのものなのだが、課税当局はその暗号資産を有する者の住所が日本であれば、暗号資産を預けている暗号資産取引所がどこにあるかは関係ないとしている。国税庁がこのように規定している以上、暗号資産を虚偽に申告した者をまず摘発しなければならないが、どのようにして不正記載したものを見つけるのだろうか、IRSの苦戦を見つめていると、国外財産調書のように国民、納税者の性善説に頼る他はないのだろうか。

☆ 推薦図書。
鎌田實著 「ピンピン、ひらり。」 小学館新書 924円
73歳の著者は、有名な医師である。「新しい老いの生き方」を伝授する。鎌田先生は最近入院治療を体験したことがきっかけで「老い」をしっかりと生きていく覚悟を決めた。「ピンピン、ひらり」死ぬ間際までピンピン元気に生きて、ひらりと逝きたい。避けたいと思っていた「老い」も視点を変えると見え方が違ってくる。老いには「死を身近に感じながら生きる」という特権もある。死を意識するからこそ、生きていることの尊さがわかるのだ、老いという「下り坂」美しい景色も見せてくれる。「上がり坂」は上ることに一所懸命で、自分の足もとしか見えていないことが多い。でも「下り坂」は違う。眼下にはこれまで上がってきた道のりや、すそ野の広大な景色が広がって、美しい景色は人生のご褒美だ。本書はこの老いの価値の見つけ方から、そのための生活習慣まで書いている。

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