ブログ

FBIとトランプ前大統領の機密文書の攻防

先月機密書類の不法保持によりFBIにから家宅捜査を受けたトランプ前大統領だが、日本のメディアはうまく報道していないので、この問題をブログにしたためた。家宅捜査後、独立した第三者により押収された書類をレビューするまでFBIによる捜査を停止するよう裁判所に訴え、裁判所はトランプ側の主張を認めた為、捜査がかなり長引きそうな状況になった。トランプ前大統領は、これらの機密文書は自分が大統領の時に非機密化しているとして、今や機密文書でないことを主張しいる。
今年1月に、アメリカ国立公文書記録管理局が大統領時の文書の引き渡しを再三トランプ前大統領に要請し、やっと15箱分の文書が送られてきた。その中には65のConfidential書類、92の Secret書類、25の Top Secret書類が紛れ込んでいたという。国立公文書記録管理局は、これは大統領関連の文書以上の機密書類であり、とても自分たちの手には負えないということで、司法省に相談し、FBIは当時のトランプ氏周辺の人物に捜査を進め、不法に機密文書が保管されていると判断し、家宅捜査となったいう事だ。
このConfidentialの意味は、 国家安全保障を損なうと考えられる最低のレベルの情報、また Secret は国家安全保障にかなりの損害を与える情報、更にTop Secret は国家安全保障に例外的に重大な損害を与える情報と定義されている。この他に、Special Accesses Program はビンラディン殺害時のような極めて少人数での情報共有プログラム、Sensitive Compartmented Informationのようなインテリジェンス(スパイ)が入手した情報もあるという。
これらの情報を機密化するしないは、憲法が最高司令官として大統領にその権限を認め、大統領令の中でその手続きは文書化されている。クリントン大統領以来、ブッシュ、オバマとその大統領令はアップデートされてきたが、トランプ及びバイデンはアップデートしていない。この大統領令はOriginal Classifierとされる人に何を機密化するかの権限を与えている。このOriginal Classifier とされる人々はDirector of Intelligence及びその他高官で、大統領府にいる4万人近くの職員のうち現在1491人にその権限が与えられている。
彼らは、まず、どのような情報が機密化されるべきかのガイドラインを書く。例えば、誰により、どうして、いつまで機密化されるかを記載し、通常は25年で非機密化される。非機密化される際も、Original Classifier もしくは大統領によって行われ、機密化されたときと同様にガイドラインがあり全て文書化される必要がある。
今回トランプ側の弁護士はMar-a-Lagoにあった書類は全て非機密化されていると主張し、現にトランプ氏も2020年にツイッターで、非機密文書命令を出している。ところが、非機密化された文書の公開を求め、ジャーナリストたちが訴訟を起こしたところ、その訴訟は裁判所で拒否された。その際の裁判所での首席補佐官の証言によると、確かに公の場でトランプ氏は非機密化の命令を出したけれども、そのような非機密化の手続きを何ら行っていないということである。つまり、トランプ氏は大統領として非機密化の権限をもっていたが、必要な手続きを何ら行っていなかったことになってしまった。
今回のFBIの家宅捜査は、実は機密文書についてだけではなく、更には、重要な政府記録の不正な所持や取り扱いもしくは不正な操作も視野に入れたものではないかと思われているが、今後の裁判所の判断に注目が集まっている。今回のケースは、口は先に出るものの実務に弱いトランプ氏の弱点が出たとのマスコミの記事があるが、今後の裁判次第で、トランプ氏は有罪になると刑務所に入る可能性もあり、2年後の大統領戦をはじめ、今の共和党の政治家にに大きな影響が出てくると、アメリカメディアは騒いでいる。

☆ 推薦図書。
野口友紀雄著 「どうすれば日本人の賃金は上がるのか」 日本経済新聞出版 900円
著者はご存じ元大蔵官僚で著名な大学教授である。今や他の先進国と比べて賃金の安い国となった日本。物価が上がるのに賃金は上がらない。どうすればこの状況から脱出することができるのか。その実現のためには日本社会を根底から変えなければならない。賃金が上がらないのは、企業が稼ぐ力がないからで、つまり稼ぐ力を高める環境を整備しなければならない。企業の付加価値を高めるには、税制、年功序列賃金の是正、女性労働の活用、組織間の労働力流動化などがある。シリコンバレーに働くサラリーマンで年収1億円はザラであり、韓国より低賃金な日本になったが、実は日本人の6割が働いていない、それではGDPは増えない。そして日本型賃金体系を崩壊させなければならない。と

関連記事

  1. 新たなタックスヘブン国、アメリカ(1)
  2. アメリカ議会の高齢化が問題
  3. 贈与税の非課税規定の見直しか
  4. アメリカIRSからの個人情報流失、マイナンバーに影響か
  5. 海外脱出者の税逃れを防げるか
  6. 大谷翔平選手とカリフォルニア州税務当局の壮絶な戦い
  7. 日本の脱税事犯
  8. マンションの相続税評価の見直し

アーカイブ

PAGE TOP