少子高齢化社会の日本では、毎年増え続けているのが、子や孫がいない人の死亡である。子もいない兄弟もいない、身内がいない人の相続財産は国が没収する。この「相続人なき遺産」の額は2021年度には647億円に上る。その額は過去最高を毎年更新している。10年前は332億円、20年前は107億円だったことを考えると「相続人なき遺産」の額は急上昇しているのがわかる。都会では孤独死が増えている、死後何日か経って死んでいるのがわかるのが多いそうだ。そのため町内会で一人暮らしの人に定期的に巡回を行っているところもある。身寄りのない人が亡くなると、つまり法定相続人がいないと、その人の利害関係者か検察官が家庭裁判所に申し立て、相続財産管理人を選任してもらう。管理人は故人の財産債務を整理して、残った金銭を国庫に納める。
しかし、現実には相続財産は法定相続人しか相続できないのではない。アメリカなどでは死ぬ間際の看病を2か月間しただけの看護師が全財産をもらったケースもある。日本も同様で、「特別縁故者」という制度があって、籍を入れていないが内縁関係にある者がそれに該当する。さらに内縁関係になくとも一緒に暮らしていた人や、看護をしていた人が「特別縁故者」と認められれば、故人の遺産を受け取れる。また個人ではなく養護施設が受け取った例もある。高裁の判決で、長年知的障害者で、その者を35年間面倒をみた障害者支援施設が相続財産を受け取った。
昨年の出生数が80万人を割り込んだのである、団塊の世代の出生数が200数十万人と比べると少子高齢化社会があまりにも激増しているのに加えて、未婚率が大幅に上昇している。最近の婚姻数は毎年60万組程度、団塊の世代時代は100万組超、これからも相続人がいない、身寄りがいない人が増加するのは必然で、その遺産額は数年先には1000億円達する。このさい、身寄りのいない富裕老人に近づいて遺産をせしめる業を行うものが出ないとも限らない。なんとも寂しい日本の未来である。
☆ 推薦図書。
猿渡歩著 「1位思考」 ダイヤモンド社 1650円
著者はアンカー・ジャパン株式会社を2013年に創業し、9年目に売上300億円を達成した。事業はモバイルバッテリー、充電器などで国内オンラインシェアで1位を獲得している。なぜ後発の会社が1位なのか、それは「1位思考」である。99%と100%とは1%しか違わないと思う人が多いが、この差は極めて大きい。このこだわりを続けて100%を目指す。やりきれた場合、それが圧倒的な強みになる。人の行動は価値観から生まれる。周囲に「成長したい」という価値観を持ち、実際、成功しているひとがいると、努力するのは当たり前だと思う。逆に成長に興味がない人に囲まれていると、成長するのが馬鹿らしくなる。リーダーの仕事は1%にこだわる習慣を組織全体に定着させれば、皆で高めあい、前向きに成長してゆく集団になる。全員がバラバラな方向を向いている会社は成長しない。いくら能力が高い人が集まっても、一枚岩でない会社は成長しない。と