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Wall Street Journalによると、2017年施行された相続税のトランプ減税措置は2025年までの時限的な措置であり、この減税期間が終わる前に相続税対策を行おうという富裕層が増加していると報じている。IRSの統計によれば2021年にアメリカ人の贈与総額は1826億ドル(25兆円)に達し、これは前年度の752億ドル(11兆円)の2倍以上となっている。2021年には2584件(日本は14万件)の相続税申告が行われ、184億ドル(2兆円)(日本は2.4兆円)の税収である。またUSBの報告書によれば、アメリカでは純資産1000から5000万ドル(70億円)の世帯は150万件(日本の200倍以上)ほどあるとされている。
2017年当時に贈与・相続税の基礎控除が一人1000万ドル(10憶円、夫婦で20億円、日本は4800万円)だったが、その後物価指数に連動し引き上げられ、今年は一人1292万ドル、夫婦合算で2584万ドル(35憶円)になる。物価上昇が続くアメリカ、恐らく来年は1361万ドル、2025年には1400万ドルまで引き上げられと言われている。しかし、この基礎控除も時限措置であるので。このまま延長されなければ2026年には700万ドル(10億円)に減額されるので、2025年12月31日までに何らかの相続税対策をしなければならなくなる。バイデン民主党政権が続けば、その可能性は大である。
贈与について言えば、現金や株式を直接贈与するのが一番簡単だ。アメリカでは生涯贈与・相続税基礎控除額の他に年間17000ドル(230万円、夫婦で460万円、日本は110万円)の非課税贈与枠がある。誰でも無制限の人数に一人当たり17000ドルまで贈与が出来る(つまり何人から贈与を受けてもOK)。夫婦で行えば34000ドルの計算だ。この贈与を行う場合にはForm 709を申告する必要がる。ここで注意が必要なのは長期保有で含み益のある株式の贈与である。日本は受贈時に含み益に課税するが、アメリカはキャピタルゲイン実現時にしか課税されない。受贈者は贈与者のコストを引き継ぐので売却時にキャピタルゲイン税が発生する。受贈者が低い課税率であればよいが、そうで無い場合は、死亡時にコストが市場価格でStep Upされる税法(含み益課税はなし、相続人の取得価格は時価とみなす)を利用し、死亡時に相続した方がアメリカでは有利になる場合は多い。
アメリカでは子孫へ財産の温存を図る為、Dynasty Trustがよく利用される。このトラストでは親子の資産がトラストに移動されることにより親子の財産が減額される。また、直接子供へ贈与することにより、訴訟や離婚により贈与資産の一部もしくは全部が失われるというリスクも回避され資産保全の観点からも利用される。但し、トラスト自体はキャピタルゲイン税等の課税の対象となる。
共和党は贈与・相続税の撤廃を唱えているが、民主党は贈与・相続税非課税枠を350万ドル(5億円)まで引き下げ、相続税率を77%まで引き上げ、死亡時のStep Upを廃止、Dynasty Trustの制限を唱えている。トランプ減税はバイデン大統領になっても継続されていることから、今後民主党が続いても延長の可能性も十分あるが、それに頼ることはギャンブルであり、アメリカの専門家はこの非課税控除枠が引き下がることを前提に相続対策を行うべきだとアドバイスしている。そうしないと現在の大きな節税機会を失うことになりかねないと。

☆ 推薦図書。
小林雅一著 「生成AI」 ダイヤモンド社 1980円
副題として、「ChatGPT」を支える技術はどのようにビジネスを変え、人間の創造性を揺るがすのか?
私も毎月20ドルを払ってChatGPTを使用している。しかし期待通りではない。いまや毎日の新聞で生成AIの文字が躍らない日はないぐらい、この技術が我々の生活やビジネスに根を下ろしている。生成AI、これは画像やテキスト(文章)、コンピュータープログラムなどの各種コンテンツを「生成」するAI(人工知能)である。ChatGPTは並外れた言語処理能力を有し、それが人間の知的能力を上回れば「ホワイトカラー職」や「クリエイティブ職」の仕事を奪う。AIは高度な知的作業は得意だが、「運動する」「運ぶ」などの作業は出来ない。そのためトラック運転手、建設作業員、工場労働者のいわゆる「ブルーカラー職」の仕事は当分残る。この生成AIの研究開発は米国が突出している。中国は言論弾圧で苦戦している。言葉で音楽を作曲することもできるが、既存の楽曲と酷似する可能性もある。動画生成AIで高いレベルの動画が作れるようになれば映画界、テレビ局も大打撃になるとしている。

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