Forbes誌によると、元プロボクシング世界チャンピオンのフロイド・メイウエザーがインスタグラムで、先日行われたスーパーボールのスイート席を100万ドル(1.5億円)支払ったとあり、更にIRS宛の支払小切手の写真が投稿され、その金額は$18,047,181ドル(25億円)と書かれてあった。そこに彼は、引退後でもこれだけの納税しているのだ。現役時はいくら払っていたかを想像してみて欲しいと投稿していた。
メイウエザーはリング外では家庭内暴力や人種差別発言等、常に行儀の悪い、問題多い選手だったが、2018年には、推定2億8500万ドル(360億円)稼いだとされ、当時のメッシの1億7500万ドルを遥かに凌ぎ、Forbes誌のスポーツ選手で最も稼いだ選手としてランキング1位となっている。しかしながら、メイウェザーが示した、この小切手の金額には疑問が呈された。つまり、このような大きな金額の小切手を本当にIRSは受取ることが出来るのかということである。これが今回のテーマである。
Forbes誌の調べによると、答えはYESだ。但し、金額には上限があるようである。2016年1月1日にFRBは連邦政府に小切手で払うことの出来る金額は$99,999,999(140憶円)までだと通達している。アメリカ的な話だが、数年後IRSは公報で上限は$99,999,999.99と訂正している。よくわからない。
ところがよくよく調べてみると、実際にアメリカ財務省の機械が小切手を処理できる金額は100万ドル(140億円)までで、それを超えると手作業で処理を行う必要があるようだ。手作業となると、紛失、盗難、署内の誤郵送等のリスクが増える。また、金額が金額なので、人間が扱うとなると、更には詐欺的行為や処理のミス等の事件に発展するものも可能性としてはあるので、リスクは増大する。日本の国税庁と違って、IRSの署員の中には相当いい加減な担当者もいるので、様々なリスクが高まることは間違いない。
日本は納税に銀行振り込みなどを行うが、アメリカは小切手を送付するのが常である。しかしIRSへの支払い方法は小切手だけではない。例えばDirect Payだが、支払金額は1000万ドル以内等制限があるが、納税者の銀行口座から安全に支払いを行うことが出来る。更にEFTPS (Electronic Federal Tax Payment System) による支払方法もあり。設定がやや面倒だが、1回の支払金額は5000万ドルまで行うことが出来る。最後にクレジットカードによる支払いだが、日本もそれが可能となっているが、各自クレジット金額の使用上限があるので、アメリカでは大きな金額は難しいと思われる。そして支払い回数は2回までと制限されている。IRS署員による手作業はリスクが大きいので、100万ドルを超える支払いは小切手はやめるべきだというアメリカ世論である。
☆ 推薦図書。
佐藤一麿著 「残酷すぎる 幸せとお金の経済学」 プレジデント社 1760円
「幸せ」はお金で買えるのか、著者は拓殖大学教授で「幸せの経済学」を統計的に分析し、幸せに影響を及ぼす要因を解き明かした本である。
年収と幸福度の関係については、従来年収が一定以上になると幸福度は上昇しなくなると言われてきたが、最近の研究では、年収の増加とともに幸福度はさらに高まる。調査によると管理職など出世しても労働時間や責任も増え幸福度は増さないことが分かった。子供がいる女性の方が、いない女性よりも幸福度は、かなり低い。子供を持つことによる金銭的負担や時間の制約が幸福度を下げている。子育てが終わった後でも、子供の存在は幸福度を下げる。子育て期間中の経済負担によって経済的に苦しくなっている。兄弟の組み合わせも面白い。弟がいる長女と妹がいる長女では、弟がいる方が所得が低い。これを「ブラザーペナルティ」と呼ぶらしいが、この原因は両親は同性の子に影響を強く及ぼすという。面白い本である