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トランプ前大統領とバイデン大統領の経済政策の実績の比較、アメリカ・メディアから

今年11月に行われるアメリカ大統領選ではバイデン大統領とトランプ前大統領の再対決ということになったが、彼らの経済的な実績はどうかということがアメリカでは話題になっている。トランプ大統領の前半では、上下院を共和党が占め、共和党主導で2017年にTax Cuts and Jobs Actが施行された。これにより個人及び法人に対し10年間に1.4兆ドル(180兆円)の大幅な減税が行われた。また、トランプ氏はMaking America Great Againということで、経済政策の柱として貿易障壁を築き、アメリカ製造業を国内に戻す政策を取った。(国境にも一部分壁を築いたが。)特に2018年初頭、輸入品に関税をかけ、とりわけ中国に対しては厳しく、輸入品コストを一気に押し上げた。
一方バイデン政権の経済政策の柱は2021年及び2022年に施行された3つの法律からなる。一番目はInfrastructure Investment and Jobs Actで5500億ドル(70兆円)の新たな歳出と6500億ドル(80兆円)のインフラ費用の出動である。2番目はThe CHIPS and Science Actで、テクノロジーサプライチェーンに焦点を置いたもので、セミコンダクター製造及び新しいテクノロジー開発に関する2800億ドル(36兆円)規模だ。3番目はThe Inflation Reduction Actでクリーンエネルギー及び気候変動に関しそれぞれ7000億ドル(100兆円)及び9000億ドル(130兆円)規模となっている
トランプ政権時代2017年から2019年にかけての平均GDPは2.8%であったが、関税により製造業が後退し成長が鈍り関税による恩恵は見られなかった。また関税により輸入物の価格が上昇し、あたかもアメリカ人に対する増税のようになってしまったのである。それでも、意外なことに、バイデン政権はトランプ政権の関税を引き継いている。一方バイデン政権のGDPは2023年までで1.9%から3.0%である。バイデン大統領は自分の考えを効率的に法律化した。彼の財政政策は全体で1兆ドル(140兆円)程度である。パンデミックによる緊急財政出動が5兆ドル(700兆円)であることに比較すると小さくはあるが、全体的に財政赤字が膨張した。
株式市場は、パンデミック及びインフレ懸念による乱高下はあったが、過去7年間をみると、大統領による政策というよりも連邦準備制度理事会による金融政策により市場は強い影響を受け、全体的には上昇傾向にあると言える。
世界は2016年の選挙以来、この8年間でかなり変わった。特にグローバリゼーションが非グローバリゼーションにとって代わった。グローバリゼーションのピークはトランプ前大統領が関税をかける前とされている。バイデン大統領にしてもハイテク産業及びクリーンエネルギーの国内設備を増大させる政策は非グローバリゼーションの証拠と言える。この意味では、アメリカ及び中国の2極化の結果として両政権ともアメリカの国益を守ることが優先されているのが事実であり世界の常識となっている。
アメリカ議会においても超党派精神が殆どなくなり、議会機能の低下は著しく、予算策定においても特に際立った意見もなく、コンセンサスを得て、有意義な政策を立てる能力が無くなってきた。次回選挙でどちらが大統領になるのか?アメリカではどちらの顔を見たく無いという有権者が多くなってきているが、いずれが大統領になるにしても、残念乍ら、すでに最初の日からレイムダックに陥る可能性が高いとマスメディアは伝えている。

☆ 推薦図書。
奥村眞吾著 「こう変わる 令和6年度の税制改正」 実務出版 2420円
岸田内閣3回目の税制改正である。支持率が芳しくない上に、増税メガネと言われたため、増税項目はほとんど無くなった。税制改正の目玉は何かと問われると、首相は定額減税と賃上げ税制だという。確かに一人4万円の減税、標準所帯の一家4人だと16万円も税金が安くなる。しかし年収2000万円以上は蚊帳の外、つまり低所得者救済だという、賃上げをかなり行った企業には税額控除を用意しているが、果たしてどれくらいの企業がその恩恵にあずかれるか、またストックオプション、イノベーションボックス税制に見るものがあるが対象企業は少ない。若夫婦、子育て世代には手厚くしているが、何分にも手当が限られる。政府としてはコロナや防衛費で多額の支出をしたためか、もうこれ以上出せないというのが見えている。そのなかで、わずかでも税金を取り戻したいと思う方々は、ぜひこの本を読んでいただきたい。自画自賛である。

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