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イギリスの富裕層、労働党政権で国外脱出相次ぐ

イギリスは今回の総選挙の結果を受けて14年間続いた保守党が大幅議席減、最大野党の労働党が半数を大きく超える400議席超を獲得し、圧勝した。これを受けて労働党のスターマーが新内閣を発足し首相に就任した。イギリスがEUから離脱して3年が経過したが、外国人の投資を呼び込む政策として、イギリスではテムズ川をシンガポールのように金融自由化とすると謳って「NON-DOM TAX」なるものを打ち出した。この「NON-DOM TAX」税制とはイギリスの外国人居住者が、国外で得た所得に対して課税を免除する制度で、例えば日本人がイギリス居住者になって、日本で得た所得に対しては課税しない、一方日本では日本国籍ではあるが日本非居住者であるので日本の所得税はかからない、というシステムだ。このため大勢の外国富裕層がイギリスに住んだのである。しかし労働党はこの税制を廃止することを選挙公約に掲げており、多くの外国人富裕層が将来の税負担を避けるためにイギリス以外の国に移住することを検討している。(ちなみに、遅ればせながら前政権のスナクも同制度を廃止するとした。)しかし専門家は富裕層の外国流出はイギリス経済に負の影響を与えると警鐘を鳴らしている。富裕層は消費力が旺盛で、高級品などに金を多く使うが、これらの富裕層がイギリスを離れると国内の消費が減退、経済成長が鈍化する。加えて投資を引き揚げられたり、スタートアップ企業も打撃を受ける。また外国人富裕層はイギリスでは高額納税者であり多額のキャピタルゲイン税を納めているので税収の減少につながる。そして彼らが支援していた慈善活動や社会貢献も減少すると懸念している。
このほど Henley & PartnersのHenry Private Wealth Migration ReportによればイギリスはEU離脱に始まったトレンドで2017年から2023年に富裕層1万6500人を海外移住で失ったと報告している。数十年にわたりヨーロッパ、アジア、アフリカ、中東からの富裕層がロンドンに集中していた流れが逆転したのだ。労働党の首相は、さらに富裕層に課税を強化すると言っている。外国人だけではなくイギリス国民も海外移住を真剣に考えてきた。それでは、彼らはイギリスを離れてどこに行くのか、レポートによれば移住先の1位はアラブ首長国連邦、2024年は6700人移住予定、何しろ個人所得税が無いので人気の的である。近隣ではロシア人の流入も多くなっている。人気の2位は、たびたびこのブログでも書いているが、アメリカで3800人、3位はシンガポールの3500人の移住予定だとか。今や、個人も法人も税率で移動する時代だ。日本は優秀な外国人を受け入れるのにそのような施策を全く行わない、この所得税も相続税も最高税率55%の国に移住する世界の富裕層はいない。巨大企業も来ない。これで日本のGTPをどのようにして拡大してゆくのか。これで拡大出来たらノーベル賞ものだが、日本人に危機感は皆無だ。都知事選で日本は沸いたが、真剣に経済の論争を仕掛ける野党議員はいない。どんどん貧しくなる日本。平和だけが取り柄の日本はいつまで持つのだろうか。

☆ 推薦図書。
牧野知弘著 「なぜマンションは高騰しているのか」 祥伝社 990円
東京都心部や大阪の一部などのマンション価格の高騰は凄まじいものがある。何年か前、1億円したマンションが騒がれ大きな話題になったのが噓のようである。今や2億円、3億円のマンションでないと高額とは呼べなくなった。東京・大阪では25億円の物件が登場した。一体だれが買うのだろうか。驚愕の価格の背景には何があるのだろうか。日本の社会はどう変わるのか。著者は長年一流の不動産会社に勤務したアナリストである。日本社会は、これらの高額物件を対象にしたごく少数の超富裕層と大多数の貧窮層、そして、その間の中間層に踏みとどまろうとしている層に分断された日本の姿である。この著は単に不動産業界を解説しているのではない、安い一般の不動産を供給する業者より、デベロッパーは上級国民が満足するような超高級マンションを提供する方が儲かるのである。マンション価格の高騰の背景にある日本社会の変化、そして未来を考察するには為になる本である。

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