ブログ

海外活用の脱税は防止できるのか

155か国との間に租税条約を締結している日本。そしてこれらの国と脱税防止の観点から情報交換を行っている。実はこの情報交換は3種類あって①自動的情報交換②自発的情報交換③要請に基づく情報交換がある。このうち①の自動的情報交換は、有名なCRS(Common Reporting Standard)、これは、例えば日本の国税庁がシンガポールに○○氏の口座がありますか、あれば銀行口座名など取引記録を知らせてください、と依頼すれば、シンガポール政府がそれに応じてくれる。CRS(共通報告基準)とはOECD加盟国155か国間で日本人の海外金融口座情報を即座に各国で共有できる制度である。国税庁はこのCRSを活用し日本人の海外資産、海外所得を把握し税務調査に役立てていて、今やシンガポールや香港での隠し資産は筒抜け状態にある。国税庁の発表では、昨年93か国の外国税務当局から日本人のCRS情報245万件、そのうち個人口座243万件、その預金残高総計8兆2千万円を受領したとある。件数でいえばシンガポール・香港が圧倒的に多く今やこれらの国を利用した脱税工作は過去のものになりつつある。
ただ最近の傾向として,脱税手段として暗号資産が顕著化している。アメリカIRSもこの種の脱税に神経をとがらせて、バイデン大統領も多額の経費を投入して取り組んでいた。OECDも暗号資産等報告枠組みCARF(Crypt Asset Reporting Framework)を策定し、2027年から11か国で始動開始を表明している。日本では「非居住者に係る暗号資産等取引情報の自動的情報交換のための報告制度」が2026年から法施行される予定である。ビットコイン等暗号資産は所有主の国籍を問わない、ただ日本国内の業者を通せば、その業者は報告義務があるから容易に暗号資産の所有者がわかる。また暗号資産の購入のための資金を日本の預金口座から送金したとしても多額であれば送金先もわかる。今は確定申告の季節であるが、外国の金融資産が5000万円を超えれば国外財産調書を税務署に提出しなければならない。しかし暗号資産購入を外国預金口座から支出した場合には日本税務当局にはわからない。もっと難しいのはCRS情報の共有には唯一アメリカ合衆国が加盟していない。今後ますますトランプ大統領は他国との情報共有の距離を置くとみられ、税務のアメリカ孤立主義が鮮明になってきている。ヨーロッパを含め世界の富裕層の資金がアメリカに集中するであろう。アメリカ以外で税金を払うのであれば、その金でアメリカに投資をせよと、就任早々言っているくらいだから

☆ 推薦図書。
島田裕巳著 「大人の神社めぐり」 アチーブメント出版 1650円
著者は東大卒では珍しい宗教学者であり、この世界では第一人者でもある。この本の副題は「歩いて健康・長寿を祈願」である。参道を歩いて得られる達成感や自然がもたらす癒し効果、その結果、足腰が鍛えられる、ご利益は計り知れない、神社参りで無理なく長く続けられる最幸の健康習慣でもある。神社の起源から掘り起こし、神社めぐりは足腰を鍛えるだけでなく「頭にも効く」最も新しい神社の明治神宮を見れば参考になる。自然の草木に囲まれている。いえば鎮守の森の中にある。鎮守の森が重要なのは、それが神体山をもとにしているからで、神は自然の中に宿るという信仰が神社の出発点になっているからである。都会で生活する者にとってはコンクリートに囲まれながら生活をしている。それは不健康なことである。神社めぐりが、そうした自然との結びつきを回復する手立てになると、書いてある。

関連記事

  1. 新型コロナウイルスでサラリーマンの所得が変わるか
  2. アメリカの執拗なまでのオフショア口座解明
  3. アメリカ人の海外金融口座開示義務について判決
  4. 小銭(コイン)不足で社会問題・コロナ下のアメリカ
  5. アメリカの脱税密告制度(2)
  6. ニセ領収書の発行元「B勘屋」
  7. 退職金優遇税制が無くなるか
  8. アメリカ市民権者やグリーンカードホルダーのアメリカ離脱者が増加

アーカイブ

PAGE TOP