WHOに続いてアメリカ脱退。アメリカ企業の世界規模の節税に対して懸念を示しているOECD、OECD租税委員会は「税源浸食と利益移転」(BEPS Base Erosion and Profit Shifting)の規則を制定し、さらに「デジタル化に伴う課税上の課題―中間申告2018」の合意を経て2021年10月に施行された。その後、国連は「国際租税枠組み条約」の交渉開始を決定した。今現在開かれている国連総会において年内に「付託事項」が決定する予定であるが、内容の重要部分は、資金洗浄、マネーロンダリングで、テロ資金に対処するためのFATF(金融活動作業部会)そして次には匿名の法的組織の真の所有者および金融口座の自動交換などを通しての租税回避を図るための「税の透明性と情報交換に関するグローバル・フォーラム」に取り組みである。これは簡単に言うと世界の富裕層の税逃れ防止策である。これについて議論は分かれ、採決にはアフリカ諸国は単純多数決を望み、結局議定書の採決には3分の2の賛成を得ることで決着した。国連事務総長の背景説明書では、「国境を越えたサービスへの課税」がテーマで、まさしくグーグル、テスラ、アップルなどアメリカ多国籍企業の税逃れが標的であり、アメリカ富裕層にとっても国外での資産運用が問題になる。そこで数日前、国連総会でアメリカは、こう言った「アメリカは、国際租税協力に関する国連枠組みの組織会合、プロセス、あるいは交渉にこれ以上参加するつもりはない。アメリカはこの枠組み条約のプロセスの結果を拒否し、反対することを明確に強調する」としたうえで、アメリカ代表は、国連総会のこの議論が始まる初日に早々と席を立ったのである。日本はどうするのか、いまだに席を立っていないが、富裕層課税を行う日本、富裕層課税を避けるアメリカ、日本が席を立てば日本人の富裕層の資産の海外移転、特にアメリカへの送金は少し止むのではないだろうか。
☆ 推薦図書。
モーリッツ・アルテンリート著 小林啓倫訳 「AI・機械の手足となる労働者」 白揚社 3410円
副題として、デジタル資本主義がもたらす社会の歪み、と記してある。グーグル本社は、シリコンバレーでは一つの町である、そこでは社員はレクリエーション施設があり、無料のレストランやジム、映画館があり社員が交流し、一斉退社もシフトもなく、社員たちは自由を謳歌しているように見える。その一方で同じ敷地内で現存する全ての書籍をデジタル化するというプロジェクトのため働いている人々がいる。TVC(臨時社員、仕入れ業者、請負業者)と呼ばれ、その数10万人を超える。彼らには無料のレストランなどは利用できない。彼らの仕事は反復的であり、自動化されていない。20世紀の工場に似通っていて、まさに「デジタル工場」である。例えばアマゾンの宅配事業では、ドライバーはアプリの経路に従って配達を行い、アプリによって評価される。労働者は独立請負業者とみなされ、簡単に解雇される。このように労働の担い手の大部分は、柔軟かつ不安定な雇用形態で働く、彼らは「サービスとしての人間」と位置づけられるのだ。