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アメリカの確定申告の変遷と日本の申告期限

日本の確定申告の期限は3月15日、アメリカでは個人所得税の申告期限は4月15日となっており、日米ともに申告期限を終了したが、アメリカの場合、一旦仮納税をして6か月の申告期限延長を申請し、10月15日までに確定申告する納税者も多い。日本独自の制度であるサラリーマンの年末調整はアメリカなどではない、当たり前の話だが、年末調整によって家族構成や扶養状況など個人のプライバシーが、何の守秘義務もない社員が知るのだから海外ではこの制度は存在しない。したがって、わずかでも所得がある個人は、アメリカでは確定申告しなければならないのだ。最近のForbesによれば、アメリカの確定申告の期限は4月15日ではなく、もっと早かったとその歴史を紐解いている。
そもそもアメリカ政府による所得課税は1861年に起きた南北戦争により、戦争資金が必要となり、Revenue Act of 1861により個人に所得税を課したのがその始まりである。その当時の課税率は800ドル(現在の約3万ドル=450万円相当)を超える収入に対し一律3%というものであった。翌年には、この課税方法が変わり、600ドル(現在の19000ドル=280万円相当)以上の収入に対し3%、1万ドル(現在の約315000ドル=450万相当)を超える収入に対しては5%となった。この徴税によってアメリカ合衆国軍はこれで兵士に十分な食料を与えることが出来たが、南部連合軍は、1864年までに独自の税システムを導入したものの、時すでに遅く、1865年に戦争に負けたのである。
南北戦争によりアメリカ経済は疲弊し、特に南部の人たちには貧困を極めた。そのため議会はいったん所得税を廃止し、タバコやアルコールに対する税金を課すようになったが、経済は低迷し、深刻な不況が起こり、銀行破綻も発生し、1894年に所得税をまた復活させたのである。ところが、最高裁判所は、賃金に対する所得課税は合憲としたものの、利息、配当、家賃収入に対する課税は、所有資産に対する直接税だとして、憲法違反との判断を下したのである。それでは財政は持たないことから、議会は憲法改正を行う必要にかられ、William H Taft大統領のもと、1909年に米国憲法修正第16条を通過させたが、憲法改正には4分の3以上の州による批准が必要であった。当時はアラスカもハワイもアメリカの州ではなかったので、48州の内36州の批准が必要だった。これには4年以上の歳月がかかり、最後は1913年2月3日にデラウエア州が批准し、1913年2月25日にやっと憲法改正が発効した。20年かかった。フロリダ及びペンシルベニア、コネチカット、ロードアイランド、ユタ、バージニア州は、それでも批准していなのだ。
これにより、個人所得税課税が包括的に行われるようになり、1913年当時の確定申告の申告期限は3月1日と規定されている。この5年後には申告期限は3月15日に変更され、1955年には現在の4月15日に変更されたのだ。この変更には納税者とIRSに十分な準備期間を与える必要があるという理由であった。当初はペーパーによる申告であったが、現在ではイノベーションが進み、日本のe-Taxと同様、アメリカの申告件数1億4400万件以上の申告の内、96%はE-fileで行われているという。いつも思うのだが、この複雑な税法で、日本の申告期限は、いまや先進国で一番早い3月15日、アメリカのように6か月の猶予も必要ではないかと思われる。

☆ 推薦図書。
野口友紀雄著 「アメリカは、なぜ日本より豊かなのか?」 幻冬舎新書 1020円+税
アメリカと日本の国力の差はますます広がっている。今や一人当たりGDPは2倍以上の差が開き、専門家の報酬はアメリカが7.5倍高いことも証明された。国民の能力に差はないのに、国の豊かさとなると、何故雲泥の差が生じるのか? その理由は「世界各国から優秀な人材を受け入れ、能力を発揮できる機会を与えているかどうかかだ」と著者は言っている。実際アメリカの大手IT企業の創業者には移民や移民2世が多く、2011年以降にアメリカで創設された企業の3分の1は移民によるものだ。グーグルのエンジニアの年収は4億円、世界の時価総額ランキング100位以内にアメリカ61社、日本は1社、考えさせらる本である。

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