民主党は野田首相が党代表に再選され、自民党は安倍元首相が総裁に返り咲いた。
野田首相はなにがなんでも増税しなければ、日本の財政はもたないとして、消費税率を平成26年4月1日から8%、平成27年10月1日からは10%とした。これには、自民党、公明党も賛成で、衆参両院でこの法案は可決成立した。マスメディアの報道では、この3党合意はあたかも消費税率の引上げだけのようにとらえられているが、事実はそうではない。
所得税で言えば、年所得1800万円超では現行、住民税10%、所得税40%の計50%の税率を、とりあえず55%、そして60%へと上げる。
また相続税で言えば、相続税がかかる人は、現行では5000万円+1000万円×法定相続人数。例えば法定相続人が3人だと、8000万円以上の財産を残した人の相続人に相続税がかかることになる。これが3党合意になると、基礎控除3000万円+600万円×法定相続人数となるから、同じ相続人が3人であれば、4800万円の遺産から相続税がかかることになる。4800万円から相続税がかかるとなると、都会で自宅を所有していると、それだけで相続税がかかる。もっとも、貯えもあるだろうし、退職金や生命保険金も考えると、ごく当たり前の人に相続税がかかる。相続税はもともと、特定の個人に富が集中することを避けるため「富の再分配」を目指してできた税法であるが、今どき、一生こつこつ貯めた4800万円を富の再分配として社会に還元するのが政治だろうか、という疑問は私一人ではあるまい。
そして、成年扶養控除の見直し。23歳を超えて仕事もせず、収入のない子であっても、親の扶養者として「扶養控除」ができるが、3党合意では、大学を出ても家でブラブラできるのは、親の年収が高く裕福な家庭だからということで、その親の所得が一定以上の場合、23歳以上の子の扶養控除を認めないとした。私が疑問に思うのは「税と社会保障の一体改革」で、この親の年所得を400万円と定義したことである。年所得400万円がはたして余裕のある家庭なのか。
野田政権で考える「富裕層」「高所得者」の定義は、世界的に見て甚だおかしいとする人は多いだろうと思うが、日本人はそれに対して大声を上げない。尖閣、竹島のことと併せて、考えさせられる。
☆ 推薦図書 ☆
中村仁一著 『大往生したけりゃ医療とかかわるな』 幻冬舎新書 798円著者は京都大学医学部卒の医者。日本人の3人に1人はがんで死ぬ、がんで死ぬ人の多くは痛みを伴う苦しみを味わって死ぬ、がんは治療をしなければ苦痛はまったくない、病院に行けば拷問のような苦しみを味わった挙句やっと死ねる、という。がんにかかったら、一切なにもしない。生存する動物は子孫を残す役目を終えたら自然死が一番、という。中高年にぜひ一読させたい著書である。