“Prenups”という英語をご存知だろうか?この言葉を知っている人は実にアメリカ通である。正式には“Prenups Agreement”と呼ばれ、結婚前に決める財産契約のことである。アメリカのカリフォルニア州は離婚率が52%にものぼる。離婚となれば、汗水たらして働いて作った財産の過半を配偶者に取られる。DVでもあろうものなら、9割まで持って行かれるのがアメリカ。そのために、結婚式では「妻を永遠に愛します」という誓いの言葉の前に、「もし離婚する時の、妻の取り分を今、決めておく」という何だかよくわからない契約を“Prenups”と呼ぶ。
離婚、再婚が多いアメリカでは、先妻との間の子の取り分もしっかり守ってやりたいという思いもある。また、日本と同様、晩婚化が進んでいて、結婚する頃にはかなりの財産を貯めている人も多い。また、Prenupsやトラストは契約なので遺言書よりはるかに効力があり、遺言書を書いている人は再婚により書き換えなければならない。特に相続税対策を行っている者はPrenupsとトラスト、そして遺言者が正しく整合性がとれているかを常にチェックしなければならない。
Prenupsを作成しておかないと、もし夫が死んだとき、自動的に今の妻に半分の遺産を持って行かれる。そのために結婚する前から、かけ引きが必要になる。先妻の子にこれだけ遺産を相続させる代わりに、妻受取りの生命保険に加入するとかである。またAsset Protectionトラストというのもあって、会社のオーナーがよく作るが、自分が死んだら、この会社を息子に承継させるのに文句を言わない代わりに、この財産を特別にあげるという具合だ。さらにはQualified Personal-residenceトラスト(筆者の英語力では訳はできない)があって、このトラストをPrenupsの中の一部として活用し、現在の妻は私の死後、生きている間はこの家に住むことができるが、死ぬと同時に自分の子が相続する。
これらは日本では考えられないシステムだが、離婚再婚を繰り返すアメリカの長い長い歴史のなかから生まれた、アメリカ文化の一つであると筆者は思う。今後、日本の晩婚化と離婚率の上昇から、一つアメリカに学んだらどうであろう。
☆ 推薦図書 ☆
山田順著 『脱ニッポン富国論』 文春新書 777円
重税国家日本の「資産フライト」は依然として続いている。しかし、日本を脱出する人も増えてきた。すなわち「人材フライト」である。現在海外に住む日本国籍の人は118万人であり、そのうち40万人がアメリカであるが、韓国は、日本の人口の半分以下だが700万人が外国在留、いちばん外国居住が多いのは中国で、その数なんと6000万人、フランスの人口と同じである。日本はまだまだだが、最近シンガポール居住者が特に多い。所得税の最高税率は20%で、相続税や贈与税のないこともあるが、教育である。政府は優秀な他国の学生を囲い込むことに躍起である。日本より出生率が低いシンガポールは居住者の38%が外国人である。日本も習うべきで、移民受け入れに踏み切らないと将来大変なことになる。また、優秀な日本人が海外で活躍することも勧める。日本人はどこにいても愛国心があり、それが逆に日本を救うのだと言う。