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法人減税、どれほど意味があるか

現在、自民党税制調査会などで、法人税率の引き下げ論議が盛んである。近隣諸国は法人税が25%以下なのに、日本は35%というのがその理由である。

 

このほど国税庁から昨年の法人企業の実態が公表された。それによると、日本の法人企業の数は253万社余りで、連結納税をしている親会社は1,243社、その子会社を含めると9,288社とある。253万社のうち黒字会社は74万社、赤字会社は178万社である。赤字法人の割合は70%をゆうに超える。しかし、この数年、赤字会社の割合は1~2%減少しているが、依然として赤字会社圧倒的多数である。

 

黒字会社の利益合計は40兆円である。会社の税金は地方税もあり、法人税(国税)からみると約30%であるので、40兆円×30%で12兆円であると思いきや、9兆円しかない。なぜなら外国税額控除額が6千億円あるほか、繰越欠損金控除というのがある。これは前年度まで赤字があった会社は、今期の利益と前年度までの欠損金を相殺できるものだ。この結果、今期の利益と相殺した繰越欠損金は8兆7千億円あった。

 

日本の会社数253万社のうち今期黒字は3割の74万社と書いたが、この74万社のうち3割強がこの繰越欠損金を活用している。このように考えてみると、本当に利益が出ている会社は会社全体の2割もないだろう。借入金目的や入札目的のため、赤字でも黒字と申告せざるを得ない会社もごまんとある。

 

日本では資本金1億円超の会社は253万社のうち2万5千社しかない。この2万5千社の半数が日本の法人税額をたたき出しているので、法人税率の引き下げを訴えても、253万社のほとんどには影響がないのである。そもそも法人税を何年も払っていない会社が大多数なのだ。

 

それでは中小企業を含めて、何の減税を求めているかというと、社会保険料等の会社負担額である。年金、医療保険であるが、従業員本人と会社負担は折半である。会社側にしてみれば、従業員の医療費も年金も将来、会社に戻ってくることはない。まさに捨て金である。この負担は、赤字会社であっても否応なしに負担しなければならない。わずか数パーセントの会社の法人税額の減税よりも2百万社のオーナー社長の声なき声を聴くのも大事であろう。

 

 


☆ 推薦図書 ☆


池上彰著 『日本の決断、あなたは何を選びますか』 KADOKAWA 800円+税


成田空港で急ぎ手にした本が、これである。著者は言うのは、日本政府はすべて「先送り」で本当に「決められない」政治であるという。東日本大震災、東京電力福島第一原子力発電所事故、そしてTPPとしている。

しかも騒いでいる東京オリンピックは日本経済の起爆剤になるのか。そして日銀の黒田総裁は本当に頼りになるのか。パフォーマンスだけで、実際に責任を取るのかどうか?年金崩壊は目の前に来ている。今こそ日本政府は逃げずに、先送りせず、面と向かわなければならない時にきているとする。

 

 

 

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