ブログ

アメリカ国外に居住するアメリカ人の税逃れ

アメリカ財務省はアメリカ市民権(グリーンカードホルダーを含む)の市民権及び永住権放棄者の名前を公表した。今年これまで2353人が市民権・永住権を放棄しているが、このうち2人が日系人である。昨年の市民権・永住権放棄者は過去最高の2999人であったことからおそらく、それを超えるのではないかと思われる。このような放棄者の増加の背景には、オバマ政権によるスイスUBS銀行をはじめオフショア口座の締めつけ、さらにアメリカ人のアメリカ国外預金口座開示義務、FATCA(Foreign Account Tax Compliance Act)の発効が原因であるところが大きい。

 

さらに今回、TIGTA(Treasury Inspection General For Tax Administration)によりIRS(アメリカ国税庁/Internal Revenue Service)の国際徴税システムのレビューが行なわれ、このレビューでは、IRSはその非効率なマネジメントにより国際徴税に関していくつもの弱点があるとの報告を行った。それによるとアメリカ国外に居住するアメリカ人、アメリカ永住者に対しての徴税プログラムが十分ではなく、しかもIRS担当官の役割もいい加減で、さらにトレーニングも十分でないとしている(日本はもっといい加減だと思うが)。

 

結論としては、国際的に脱税を防止するには“Custom Hold”が十分機能していないとしている。この“Custom Hold”とはアメリカ国外に居住するアメリカ納税者が納税を怠っている場合、IRSは“Department of Homeland Security”で管理されているリストにその怠っている者の名前を入力し、もし、その入力された者が空港などのイミグレーションを通過する際には、その者を捕まえるというシステムである。IRSはこの“Custom Hold”(日本語訳は筆者では不可能)のシステムがどれだけ効果があるのかわからないとしていて、TIGTAによると、このリストにはアメリカ市民権及び永住者の名前が1700人ほど記載されているとのこと。そして彼らの延滞税の総額はなんと17億ドル(約2000億円)というから驚きである。

 

ホワイトハウスによるとアメリカ人の780万人が海外に居住しているが、日本なんかと異なり、アメリカ人はどこに居住しようがアメリカIRSに納税の申告をしなければならないという法律がある。これはCIVIL WAR以来の法律であるが、IRSはオフショアのAMNESTYプログラムにより過去5年間で4万5000人以上もの納税者が自発的に修正申告し、その金額は65億ドル(約8000億円)にものぼると強調している。しかしアメリカの新聞各社によると、現実はこの100倍以上の徴収漏れがあるとしていて、IRSの国際徴税能力は極めて貧弱であるとコメントしている。翻ってみれば、アメリカの強権ともいえる権力を駆使してもこの程度だから、日本はまだアメリカIRSにも及ばないと思える。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
池田徳孝著 『ボクには足はないけど夢がある!』 角川出版 1,300円+税
著者の池田氏は長年の私の友人であり、気心が知れた仲である。彼が一念発起し、自らの体験と未来を綴った本である。交通事故で左足を失ったが故に人生観が変わった。それは生きていることへの感謝であり、あたり前のことができる素晴らしさ。明日、誰も自分の人生がどうなるかわからない。だから今、やりたいことをする。なんにでも挑戦しているという。
どん底でつかんだ人生。今さら「失ったものを数えるな。残されたものを最大限に活かせ」という信念のもとに、挑んだ介護事業。2025年、日本の要介護者は686万人超。だが、この業界の平均給与はなんと20万円以下である。今こそ医療介護業界に革命を起こすべく、自らのハンデをものともせず、高齢者や障害者の生活向上に努め「社会企業家」として日々、活動を続ける著者独自の仕事哲学は一読に価する。

関連記事

  1. アメリカの2014年度税制改正案、日本との差
  2. オバマ政権、富裕層への締めつけ強化
  3. デジタル資産の相続、アメリカ
  4. 海外口座55万件を入手、国税局
  5. クレディスイス問題とアメリカのタックスヘイブン
  6. 黒人差別の実態、アメリカのメディアが報じる
  7. 消費税上げが直接財政収入につながるか
  8. 未請求資産とは何だ!アメリカ事情

アーカイブ

PAGE TOP