アメリカ財務省の公表によると、昨年、アメリカ市民権及びグリーンカードの放棄者が3,415人となり、一昨年の2,999人から14%も増加したと。2009年までは市民権等の離脱者は1,000人未満の3ケタで推移してきたことを思えば格段の増加である。
市民権やグリーンカードホルダーのアメリカ脱出の原因は、税金である。2014年9月から国務省はこれらの離脱者手続料を450ドルから2,350ドルに5倍引き上げたが、ばかげている。問題は、アメリカ政府はオフショア口座の取締りを厳しくしたからだ。日本人では考えられないが、脱税で逮捕されると、刑務所に収監されるという恐怖がある。
オフショア口座に関して、IRS(アメリカ国税庁)は最も脱税温床となっているオフショア指定銀行10行を指定している(このブログでは既に言っている)が、このほど、IRSはイスラエルのBank Leumi及びパナマのSovereign Management & Legal, Ltdを、ブラックリストであるOffshore Voluntary Disclosure Program(OVDP)に追加し、追徴税額の最も高いカテゴリーに入れることになった。
これらのリストに入っている銀行に預けていると、追徴税額は一番高かった口座残高の50%となる。1億円の残高に対して5,000万円の税金である。さらに、申告していない配当や利息もあるであろうから、それらに対して通常の申告の他に、さらに20%の追徴課税があるので、隠していたオフショア口座の金融資産のほとんどを取られてしまう。しかも金融資産だけではなく、不動産家賃収入やパートナーシップ等の投資収入も対象となる。
これらの口座(OVDP)に預けていた者に、IRSは、「恐れ多くも、私が預けていました」とする(Pre-Clearance Letter)申し出をした場合は、その日のペナルティレートの50%を適用すると言っている(つまり最高残高ではない)ので、身に覚えのある者は早くお上に申し出よと。
IRSはOVDPとは別にStreamlined Program(Streamlined Filing Compliance Procedure = SFCP)を設けている。これは脱税を意図したものではなかったが結果的に脱税になったという者に適用されるもので、追徴税額は僅か5%となる。しかし、脱税(節税)は意図的ではなかったということを納税者は証明し、認証(Certify)を受けなければならない。このCertifyすることのリスクもまたある。Certifyした後、IRSが、やはり意図的だと認定した場合は偽証罪に問われ、刑務所に行くことになるからである。このようなことから国籍離脱者があとを絶たない。
税金に対する日米差。日本はまだまだ脱税者に対しては甘いのである。
☆ 推薦図書 ☆
松原邦久著 『チャイナハラスメント』 新潮社 760円+税
反日政策を常にとる中国。中国在住が長い筆者が中国から「国民友誼奨」を授与されているが、日本は中国から差別を受けている。例えば、トヨタや日産が中国で苦戦しているのは、車体とエンジンを別々の合弁会社で生産することを強いられているからである。このことから、かなりの労力と経費が失われている。
また中国では知的財産権はない。したがって中国人が自ら開発、研究するより盗んだ方が安上がりという考えがあり、なんと言っても、賄賂がビジネスの潤滑油である。
中国を動かしているのは7人の中国共産党中央政治、局常務委員である。反日教育を子供の頃から受け、彼らが大人になっている今、中国ビジネスを行うにあたり、留意することは山ほどある、としている。