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アメリカ人の最近の相続税対策~その1~

今、ロサンジェルスからの帰途である。アメリカン航空169便、食事が合わないのでナパのRed Wine Shyrahを太平洋上空で飲みながら、このブログを書いている。ウォール・ストリート・ジャーナル誌によると、最近のアメリカ人の相続税対策がずいぶんと変化してきたとしている。

 

日本では相続税がかからない遺産は(3000万円+600万円×法定相続人数)であるので標準世帯なら、4800万円以上の遺産があれば相続税の対象となる。一方アメリカでは、法定相続人の数に関係なく、2015年度は5.43ミリオンドル(約6億8000万円)、夫婦だと10.8ミリオンドル(約13億6000万円)までは相続税はかからない。最高税率は40%(日本は55%)だが、大多数のアメリカ人はこの基礎控除額の大きさで難を逃れている。日本は一般庶民にまでかかる相続税として、2015年からマスメディアを通じて盛んにうたっているが、アメリカでは一般家庭では13億6000万円の遺産までかからない。しかも生命保険金などもアメリカでは対象外だから、日米での相続税負担は天と地ほどの差がある。さらにアメリカ議会では相続税そのものを撤廃する法案がでてくる可能性がある。そもそも相続財産は課税済みの資産に再度相続税をかけるなどの理由がアメリカではある。そのため相続税のことをボランタリータックスと呼ぶ。

 

2002年まではキャピタルゲイン課税の最高税率が15%だったのが現在は23.8%になったことや、アメリカの税法では相続財産は相続時にその評価額がStep-Upすると定められていること、さらには相続税の基礎控除が5.43ミリオンドル(約6億8000万円)になったこともあり、有価証券等は生前に売却せず死ぬまで持ち続け、子たちに相続させた方が得策という考えが最近のアメリカ相続税対策事情である。

 

特にStep-Upは遺産の相続税評価額が被相続人の取得価額から時価の評価額に改正され、キャピタルゲインが帳消しになるという仕組み。例をあげると、株式を2万ドルで取得し、10年後にその株式が20万ドルになったとする。この者が、この株式を売却するとキャピタルゲインは18万ドルで、これに20%の長期キャピタルゲインにプラスオバマケアSurtax3.8%がかかる。ところがこの者が、この株式を死ぬまで保有したとする。この株式の評価額はStep-Upし、キャピタルゲインはゼロで、この者の遺産が5.43ミリオンドル以下であれば全く連邦遺産税を払わなくて済むということだ。但し、このStep-Upは、個人年金や401K等の税金繰り延べには適用できないので、少しずつ生前に引出すことも一つの方法である。

 

アメリカではどんどん相続税の基礎控除が引き上げられ、日本ではどんどん相続税の基礎控除が引き下げられた結果、アメリカでは6億8000万円、日本では4800万円が相続税のかかるラインになった。日本では少数の者の声が届かない。年所得2000万円超が0.3%しかいない日本では、今後ますます資産課税が強化されるであろう。(続きは来週)

 

 

☆ 推薦図書 ☆
藤和彦著 『原油暴落で変わる世界』 日本経済新聞出版社 1600円+税
2011年頃は1バレルあたり100ドル前後で推移していた原油が、2014年6月以降約50%急落した。原因はISIL(イスラム国)の行動に動揺した原油市場を鎮静化させるために、サウジアラビアが日量15万バレルの増産を行ったことにある。しかもサウジの原油鉱物資源相が「1バレル=20ドルまで減産は行わない」と発言したことから50ドル割れに至った。したがって今後10年間は1バレル=20~50ドルの間で推移するとの予測。追い打ちをかけるように、シェールオイル。このオイルは採掘にコストが高いという難点もあったが、技術革新により低コストでの生産が可能になり、2015年中にアメリカが世界最大の原油国になる。そのため中東地域の安定がアメリカにとって必要となくなったことで、インド洋は中国がシーレーンを守ることを認める可能性がある。インドは反発するであろうが、数年後に中国が世界最大の原油輸入国になるといわれる。そのため、東アジア地域のほとんどを中国海軍のコントロール下に置こうとしている。

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