☆ 今週の推薦図書 ☆
八牧浩行著 『中国危機』 あさ出版 1,470円尖閣諸島などで中国の強硬な姿勢、日本を敵視する行動、口では日中友好を期待していると言いながら、中国の対応は戦争勃発の可能性はなお大きいとする。そもそも野田前首相は胡錦濤の警告を無視し、会談の翌日に尖閣を国有にして、主席のメンツを潰した責任があるとしている。しかし中国が今抱えている問題、経済の停滞、格差社会、報道規制をしてもネット社会の出現、人民解放軍の危険な行動があり、それに対しての米国の対応方法も記されていて、チャンスもリスクも高くなった中国の危機を論じている。
現行の税法では、相続財産の取得価額が3億円を超えれば50%の税率、一方、贈与税は1000万円を超えれば50%である。贈与は相続税逃れの生前贈与とみなされていたから、ペナルティーの意味合いで、最も累進課税が激しい税と言われてきた。
今、日本人個人の金融資産は1500兆円あるといわれている。この3分の2は高齢者の所有である。しかし、高齢者が所有していると、所有しているだけで、消費には向かない。経済活性化にならないのである。そこで、小泉内閣時代に竹中平蔵大臣はアメリカの贈与税制度を取り入れた。その名は「相続時精算課税制度」。これは親から子に累積で2500万円の贈与までなら贈与税は一切かからない。2500万円を超えると、一律20%の低税率の贈与税しかかからない。その代わり、親が死ねば、生前に贈与した財産を相続財産に合算した上で相続税を計算する。そして、20%の税率で生前納めた贈与税は相続税から差引きしてくれるというもの。
これで親の財産を生きているうちに子が使えることから、経済活性化につながるという期待があった。ただ、「相続時精算課税制度」の要件に、親の年齢が65歳以上、子が20歳以上という規制がある。現実に親の年齢が65歳以上にならなければならない。日本人の平均寿命は86歳、高齢化社会で、まだ団塊世代の親が生きているため、これらの世代は、いまだに相続財産を手にしていないことから、自分の子に贈与する財産もないことがわかってきた。そこで財務省は今回の税制改正で、祖父母から孫にもこの制度を利用できるとしたのである。一世代飛ばしでも直系尊属からの贈与であれば、この制度が利用でき、いっきに個人の金融資産が若年層に移転し、住宅や車の取得に動くと思われている。
ここまでは、一般のメディアが報じてきたことである。しかし、日本の相続税法では、孫が相続財産を取得すれば、原則20%税金が高くなる(代襲相続は別)。これらの手当をせず、単に生前、「相続時精算課税制度」を使って孫にも贈与できますでは、確かに贈与時は助かるが、結局贈与者が死ねば相続財産に合算されて、法定相続人より2割も高い相続税を払わされるのであれば、一種の詐欺みたいなものである。再来年から相続税の最高税率は55%になる、孫が相続財産を取得すれば、なんと最高66%の相続税率。政府や財務省はこのことは言わず、2割加算も伏せて、声高らかに「孫にも贈与できます」とだけ謳うのは如何なものか。