Wall Street Journal誌などによると、米国務省は最近、米国外に居住するアメリカ人を760万人から870万人に修正したと報告している(軍や外交官などを除く)。アメリカ人は国外に持つ預金口座をIRS(アメリカ国税庁)に報告しないといけないが、フォーム(Fin CEN Form 114)の提出数はなんと100万人にも満たない。外国居住者のうち半分は子供であっても足りなさすぎである。
Fin CEN Form 114の提出期限は毎年6月30日。このFormを提出せず、隠ぺいがIRSにバレた場合、預金残高の50%以上のペナルティーが課せられる。過去に150%のペナルティーもあったほどだ。そのことでアメリカ市民権やグリーンカードを放棄すべきか悩んでいる者も多いと聞く。
事の発端は2009年のスイスのUBS問題。そのため、2010年にForeign Account Tax Compliance Act(FATCA)を国会で成立させ、国外の銀行証券会社等の金融機関に対しアメリカ人の口座情報を全てIRSに引き渡せという法律。外国に対してなんと傲慢な法律だろうか?しかし既に現在、国外の金融機関、日本の銀行等を含め、アメリカ怖さから、なんと16万5000行がこの開示にサインをしていて、アメリカは出てくるこの情報を手ぐすね引いて待っているという。恐ろしい国でもある。
そうしたことから国外の銀行では日本をはじめ、アメリカ人の銀行口座を新規開設するのを事実上拒否するところが大変増加している。アメリカ人口座を管理するのが厄介だからである。このため国外居住のアメリカ人は新規口座の開設を拒否されたり、既存の口座も閉じて欲しいと言われたり、大変な迷惑を被っている。そのためアメリカ人がNPO法人American Citizens Abroadを立ち上げ、税法を見直せと言い、アメリカ議会も行き過ぎがあるのを認め、見直す必要があると公言した。2013年2099人、2014年3415人がアメリカ市民権やグリーンカードを放棄している現実を問題視しだしたのだ。
IRSは昨年から、脱税を意図していない人たちに対しては、ほとんどペナルティーもなく過去3年間の修正申告と税金納付で完結する“Streamlined Limited-Amnesty Program”を導入。反対に5万ドル(600万円)以上滞納している納税者にはパスポートを取り上げるという法案が検討されている。そうなると国外居住者はどこへ帰るのかという疑問も湧いてくる。このような厳しい環境下、アメリカ人は弁護士や会計士に高いコンサル料を払い、どうしたら良いかのアドバイスをもらって、お金をスイスからイスラエルに移したり、所有主をトラストにしたりファンドにしたり、資産を隠ぺいするなどの事態が生じている。
アメリカ市民権やグリーンカード放棄者は出国税(資産200万ドル(2億4000万円)所有や過去5年間の所得平均16万ドル(2000万円)以上が対象)が課される。全世界で所有する財産を今、売却したとした税金を払って出国せよという税だが、69万ドル(8400万円)の非課税枠があるものの、出国者はFederal Registerにその名前が公表され、しかも市民権離脱者から贈与や相続でアメリカ在住の家族が取得した財産には40%の厳しい税が課せられる。日本ほどではないがアメリカも自国を見捨てる者には厳しいペナルティーがある。
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徐静波著 『2023年の中国』 作品社 2,400円+税
中国がリーダーシップをとる「アジアインフラ投資銀行」創立メンバーが51か国と、当初予想をはるかに超える国が参加した。もともと中国のGDPは1800年代前半には世界一だったが、産業革命に乗り遅れたため没落した。習近平は農村・都市の戸籍の差をなくし農民の都市化を進める。その結果、消費は3倍になり、2025年にはアメリカの1.15倍消費大国となる。
オバマ-習近平は米日関係から米中関係への方向転換を暗示している。もし中米が同盟関係を成立した場合、平和なアジアとなるが日米同盟は何の価値もなくなってしまう。米中が共同で日本をコントロールする時代が到来したら、日本にとっては正に悪夢が現実のものとなるとしている。