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ストックオプション脱税に無罪

☆ 今週の推薦図書 ☆

山田順著 『資産フライト「増税日本」から脱出する方法』 文春新書 788円
海外に送金する額が1回100万円を超えると、すべて送金者、送金額が税務署に報告される。よって、最近は1000万円や2000万円を現金のまま香港などに運んでいる人が多くなった。それも医者や弁護士、中小企業オーナーなどである。出国の際のセキュリティーチェックでは、係官は何も言わない。彼らは危険物の発見のみに仕事をしているからである。
ニューリッチ族は、今後ますます富裕層課税が強化される日本を見放し、税金の低い、住みやすい海外へと移住する。つまり「さよならニッポン」である。金融ガラパゴスといわれる日本の将来に不安がるのは筆者だけではあるまい。英語教育を身につけた、これからの日本を背負う富裕者の日本脱出の増加は時間の問題であるとしている。

 

アメリカ滞在が長引いたので、ブログは一週間休ませてもらった。

ストックオプションとは、会社が自ら発行する株式を自社の取締役や従業員に、あらかじめ定めた安い価格で購入できる権利を与えておいて、その株価が値止ったときに安い価格で買い、即、高い価格で売却して儲けることができる仕組みである。

日本の税法では、儲かった金額は株式の譲渡所得として扱われ、最高でも20%の課税で済む。しかし、要件を満たさない場合は、給与所得として処理され、最高で(所得税+住民税)50%となる。外国の企業や一定の要件を満たさない会社のストックオプションの課税は給与所得として扱われ、高税率の課税である。

このたび、東京地裁で判決があったが、正直驚かされた。国税から訴えられたのは、ストックオプションで得た所得を申告せず、所得税1億3000万円を脱税したとして所得税法違反罪に問われたスイスの大手の日本法人「クレディ・スイス証券」の部長で、東京地裁は判決で無罪を言い渡した。

申告漏れの事実に疑いはなく、脱税が故意かどうかの有無が争点だった。無罪だとした佐藤弘規裁判長は、①株式報酬の仕組みが複雑、②被告はそれまで多額の報酬を得ていた、などとした上で、被告に過少申告の認識があったと認めるには疑問が残るとして罪に問えないと判断した。検察は脱税意識があり、懲役2年を主張していたが、弁護側は「株式報酬も源泉徴収されると思い込んでいた」として無罪を訴えていた。

被告はストックオプションに係る税金は知らなかったとして無罪となったが、はたしてこんなことが起こるのだろうか?証券会社の幹部が知らなかった。顧客にストックオプション税務を教えるのは、証券会社の方である。法を知っている、知らないにかかわらず、法を違反した者は罰せられる。ドライバーが「ここは制限速度が40㎞とは知りませんでした」として罰金を払わないで済むはずがない。一昨年から、ストックオプション課税をめぐって、多数の外資系幹部社員が起訴された。「私はストックオプションに対しての税金を知りませんでした」とプロの金融マンの主張が通れば、国税庁のメンツもない。今回の裁判はよほど弁護士の腕が良かったかもしれない。しかし、2審ではどうなるのか見守りたいものだ。

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