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アメリカIRSからの個人情報流失、マイナンバーに影響か

私は今、太平洋上空でこのブログを書いている。最近IRSがハッカーに攻撃され、当初考えられていたより3倍もの被害にあっていたというニュースが流れた。IRS(アメリカ国税庁)は5月当初にウエブサイトから10万400件の個人情報が流出したとしたが、よくよく調べてみると33万件が流出していたというものだ。日本年金機構がサイバー攻撃を受け個人情報が流出したという事件を思い出す。ただ、これが日本の国税庁に対するサイバー攻撃による個人情報の流出もあり得るので他人事ではない事件である。

 

さて、今回のアメリカ納税者のデータ流失はどのように発生したのか?IRSのウエブサイトには”Get Transcript”というツールがある。これは過去の申告書を紛失した納税者がIRSのウエブサイトからアクセスできるように、手助けするツールである。例えば、住宅ローンや学費援助申請の際、ここから過去の所得申告書をダウンロードして金融機関に提出できる仕組みだ。大変人気のあるツールで今年のはじめまでに2千300百万件ものダウンロードがあった。

 

このツールにアクセスするには納税者番号、生年月日、住所等の入力が必要になる。ところが最近の度重なるデータ流出により、さまざまな個人情報がオンライン上でアクセス可能になっていて、これらのデータを取り込んで盗用する人たちをサイバーマフィアと呼んでいる。今回彼らの手口を調べると、IRSのウエブサイトをハッキングしたわけでもなく、データ流失でもなかった。これは正当な方法で既に流失したデータを利用して、あたかも全うな納税者を装い、このGet Transcript のツールにアクセスし個人情報を取りこんだものである。

 

このような形で今年2月から5月の間に61万件にアクセスを行い、33万件の個人情報盗みだしに成功したようだ。5割以上の確率で成功したのでかなり高い精度である。いかに個人情報が流失してサイバースペースに出回っているかである。確定申告書には納税者の所得から、家族構成、不動産、投資、銀行情報まで含まれているので、これらの納税者を装い、還付金を受けたり、ローンを組むことができるわけで、本当に怖い話である。IRSによると、これまで判明した限りにおいて、偽の納税者を装い還付を受けたものが、わかるだけでも15万件あると公表している。

 

この事件はインターネットが発達した現在、本人確認がいかに困難になったかを物語っている。今回の事件を受け、IRSは実験的なプログラムとして6桁のPIN番号を納税者に与え、追加的なセキュリティを加えている。現在のところ、このPINは今回の被害者及びフロリダ州、ジョージア州、ワシントン州の納税者にしか渡されていないが、IRSは全国的に広げていく方針のようだ。被害を受けなかったものの、アクセスを受けた残りの30万人にPIN番号は配布されていないが、サイバーマフィアは既に納税者番号と名前をわかっているはずなので、IRSが更なる対策をとって欲しい。

 

米国でも様々な企業及び官庁からのデータ流出が発生していて、個人情報がサイバースペースに出回っているのかわからない一方、ありとあらゆる所でパスワードの設定を求められるので、このインターネットという利便性が逆に自分たちの生活を脅かしたり、不便なものしたりという皮肉な状況が生まれている。マイナンバー制度は、個人の戸籍から収入額まで全て網羅されているので、流出を前提として考えると、私はマイナンバーを取得したくない。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
広瀬隆著 『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』 ダイヤモンド社 1,600円+税
この著は事実だとすると、大変恐ろしい事である。昔、1950年代後半、アメリカのユタ州のセント・ジョージの町で癌死者が急増した。原因は隣のネバダ州で行われた核実験の影響であり、隣の実験場との距離は220㎞。これは福島と東京との距離と同じである。セント・ジョージで癌死者が急増したのは、原爆開始から5年後であったことから、東京での被害は、あと5年で現実に現れる。福島県では事故発生の2011年から、被災した時点で18歳以下だった青少年の甲状腺検査が行われてきたが、2014年12月末までの3年間の甲状腺癌の発症率は平常値のなんと72.6倍である。チェルノブイリ原発事故から29年後の今、ウクライナやベラルーシでは、白血病や小児甲状腺などの患者は、2004年で100万人を超えている。東京でも同じ規模の大被害が静かに進行しているとしている。恐ろしい話である。

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