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新たなタックスヘブン国、アメリカ(2)

アメリカはスイスの秘密口座をあぶり出し、2007年以降、スイスは世界一透明性の高い国になってしまった。スイスのUBSがアメリカ人の口座をオフショアで隠蔽していることが判明して以来、UBS、クレディスイスをはじめ80もの銀行が約50億ドル(5000億円)の罰金を払わされた。2010年にはFATCA(Foreign Account Tax Compliance)法が制定され、アメリカ人及びグリーンカードホルダーは、アメリカ国外に所有する全ての金融資産をIRS(アメリカ国税庁)に報告せねばならなくなった。報告を怠ったり、ウソの報告をすると重いペナルティが課され、それにより日本をはじめ世界の銀行は大変な迷惑を蒙っている。何しろアメリカ国外の銀行はアメリカ人の口座を持つと全てその情報を毎年アメリカIRSに報告しなければならないのだから、これは日本の国外財産譲渡制度の比ではない。

 

アメリカ政府の考えは、個人がアメリカでウソの申告をして脱税しても、その脱税した資金はアメリカ国内で使われるから経済効果が出る。しかし、その脱税した資金が海外に出ると、アメリカには何のメリットもなくなる。だから国外逃避するのを防がなければならない。

 

私はオバマがスイスを叩いたのも、実はアメリカに資金を呼び寄せる手段だったのではないかと思っている。私はかねてより、世界で一番安全でしかも節税ができる国はアメリカだと思っているからである。先週のブログで書いたが、スイスやバハマやタックスヘブン国からアメリカに資金を移している海外居住者が多い。しかも、ワイオミング州、サウスダコタ州、ネバダ州に集中していると記した。

 

では、何故このような田舎州なのか。日本では考えられないが、アメリカでは地方の税金は地方の政府が決める。この3州に共通しているのは、まず法人地方税と個人住民税が無いのである。しかもLLCや法人の設立が簡単にできる。あるいは匿名、つまり仮名でも信託が作れるのが大きい。さらにはこれらの州に財産を置いておくと、仮にその預金者が破産したとしても、債権者はこれらの州内にある財産を差し押さえることができない「倒産隔離法」が存在している。

 

最後に、これは一番大事なことだが、世界はアメリカのFATCAに倣ってOECDが脱税防止のため各国の銀行口座、トラスト、投資等の情報を各国で共有できる共有報告基準(Common Reporting Standard = CRS)を成立させた結果、シンガポール、香港も例外ではなくなって、署名した国も97にのぼり世界のほとんどの国が預金者等の情報の共有化になった、日本も従順に従っているが、この条約に唯一署名していない大国はアメリカであることをご存知ない方は多い。正式に世界で署名していないのはアメリカの他に、バーレーン、ナウル、バヌアツだけで、この条約にオバマは署名を拒否した。アメリカはアメリカ人の預金情報の開示を国外の金融機関に執拗に迫り、拒否されると制裁する。反対にアメリカ国内の預金口座情報は、たとえ名義人が外国人でも教えませんとういことだ。アメリカに預金口座を作るのは簡単だ。外国人でもパスポートさえあれば、まず作れる。

 

アメリカはアメリカ人が税逃れに国外を使うのは全くけしからん、しかし外国人が税逃れであろうと何だろうとアメリカに資金を置くのは、アメリカの雇用と投資については結構なことだと言っている。全く勝手な国だが、アメリカの伝統である。世界規模で節税を考えている人にとって、アメリカに投資をすることは、アメリカが守ってくれるのである。アメリカは、アメリカ及びアメリカ人にとって利益にならないことは一切やらない。アメリカを理解するうえで大事なことである。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
大場大著 『東大病院を辞めたから言える「がん」の話』 PHP新書 780円+税
今や2人に1人ががんにかかる時代。しかし巷には利益を最優先に治療を行ったり、勉強不足から時代遅れの治療を施したりする医師が溢れ、大手メディアは日々、がんに対するインチキ情報を垂れ流し続けている。著者はがん外科医と腫瘍内科医という二つの資格を持つ、世界でも稀有ながん専門医である。
この本のおもしろいのは、がんは放置した方がよいとか、がんもどきで有名な元慶応大学講師の近藤誠氏を痛烈に批判していることである。がんを放置することで何年間も生き続けられたとする近藤氏に対して、この患者のがんは治るチャンスが少なからずあったとする著者。この本の見応えは、むしろ近藤誠論を医療倫理の欠如だと結論付けていることだ。

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