パナマの法律事務所モサック・フォンセカから大量の書類が漏れ、それを南ドイツ新聞の記者が手に入れた。この法律事務所はタックスヘイブン(租税回避地)にあり、ペーパーカンパニーを作る仕事を主に行っていたという。タックスヘイブンにあるペーパーカンパニーにはほとんどが仮名や架空名義で行われ、脱税資金やマネーロンダリングの温床になっているとして批判が強くOECDで問題視された。ペーパーカンパニーはパナマに4万8000社あり、そのなかにテロ組織や北朝鮮、イランなど制裁対象になっている33の個人、企業もこの法律事務所のクライアントであるとしている。富裕層も多く含まれ、フォーブスの世界富豪番付上位500人のうち29人の名前が見つかっている。
パナマ文書で大問題になったのは、世界の指導者といえるロシアのプーチン大統領の友人、習近平国家主席の義兄、キャメロン英首相の亡父の名前が挙がったことである。その他ナジブ・マレーシア首相、アサド・シリア大統領、マクリ・アルゼンチン大統領、グンロイグソン・アイスランド首相(グンロイグソンは名前が挙がったとたん辞任)、その他ジャッキー・チェンやサッカー選手のメッシなど有名どころが連なっている。日本人の名前も400人程度載っているという。
キャメロン首相が窮地に立たされている。亡父が設立運営した投資ファンドによって利益を得ていたことを認めたが、それよりも彼は「節税は認められない。たとえその節税が合法であっても英国のためにならない」と言い切ったことが尾を引いている。プーチン大統領の名が出たのも意外だった。ロシア政府高官の節税はキプロス島で行われるのが常識だが、パナマで名が出るとは思わなかった。しかし、もっとびっくりしたのは習近平だ。中国共産党幹部の資金逃避地というか裏金は100%アメリカで行われる。歴代主席、首相はおろか、上海市長など高官の子弟はほぼアメリカに留学しているのが何よりの実証だ。私は何度も言っているが、世界で一番安全で完璧なタックスヘイブンはアメリカ合衆国であると。パナマ文書でも有名なアメリカ人はたぶん出てこない。デラウェア州など実に安全なタックスヘイブンである。
日本人も多数いるというが、名前を挙げられた人たちはたぶん一度もパナマへ行ったことがなく、一度もパナマの金融機関と接触していないどころか、このパナマの法律事務所「モサック・フォンセカ」の存在すら知らなかったのではないか。では何故、彼らの資金がこのタックスヘイブンにあったのか。日本人でも数億円以上の預金をアメリカの金融機関に預けると、必ず資産運用や節税策を預金者に持ちかけてくる。そしてファンドを組んで、その金融機関はタックスヘイブンを利用して運用する。預金者が知らないのに自分の預金がタックスヘイブンにあるというわけだ。
しかし、資産運用をタックスヘイブンなどで行うにあたり、アメリカの銀行は信託を組むので、決して預金者本人の名前が流出することはない。今回のパナマ文書で名前が挙がっている人たちは、間違いなくアメリカの銀行経由ではないといえる。リヒテンシュタインやモナコなどのタックスヘイブンもアメリカの金融機関の関与は大きいが、パナマはそうではない。世界で最もペーパーカンパニーがたくさんあるのは断トツでケイマンだ。有名な話があって、大富豪がケイマンに多額の資金を送ったが、ケイマンはキューバに近いので心配して「もしキューバがケイマンに攻めてきたら、私の現金が没収されるのではないか」とマネジャーに聞いたら、「安心してください。ケイマンの金庫はマンハッタンにありますから」と答えたという。
☆ 推薦図書 ☆小林美希著 『夫に死んでほしい妻たち』 朝日新聞出版 780円+税著者は元毎日新聞社、エコノミスト記者なので取材をもとに構成している。昨年、東京地裁で判決があった殺人事件である。被告の女は50年前に都銀勤めの夫と結婚、36年前に夫の浮気を知ることになったが、そのまま話し合うことなく年月が経った。最近になって時効だと思ったのか、不倫相手への思いや一緒に旅行に行ったこと、プレゼントのことなど今や80歳の夫が具体的な話をした。妻の脳裏に36年前の記憶がよみがえり、我を忘れて夫を殺したというもの。どのようなときに妻は殺意を抱くのか。育児という戦場から逃げる夫などで、妻の理想は子供だけがいる家庭。殺意を抱かせる帰宅する夫の足音。しかし、妻にも反省がある。「適当な男と結婚した」罪もある。経済的に豊かな場合は生活状況が落ちるのは嫌だから、惨めな自分をブランドで隠して心を癒す。あるいは、二世帯住宅という牢獄では「みんなまとめて逝ってくれないかしら」と願う。お金の問題もあり「離婚するよりおトク!」だから妻は夫の死を願う。妻に死を期待させないためにはどうすればよいか。家庭内での序列は妻が1番、2番が子、3番がペット、最下位が夫。最下位だと認識すれば下から目線になるという。男にとって参考になる本である。