トランプの確定申告書がいまだに発表されないので全米では騒ぎになっているが、前回のブログでは収入の割に納めている税金が少ないために確定申告書をアメリカ国民に公表することができないということを書いた。
最近のアメリカメディアによると、トランプはほとんど税金を払っていないか、さもなくば、チャリティーへの寄附をほとんど行っていなかったのではないかの、どっちかだという事になっている。アメリカは寄附文化で、どれほど寄附をしているかがステイタスの一つである。ビル・ゲイツやジョージ・ソロスは、税金は所得の10%台だが、考えられないくらいの寄附を行っている。
それにも増して、トランプの今までのビジネスが問題になっている。特に注目されるのは、2000年後半から始まったアメリカ住宅市場の崩壊で彼が利益を得ていたかどうかである。先日のCNNニュースでは、2006年に訴訟中のトランプ大学のオーディオブックの中で「住宅市場の崩壊を願っている。なぜなら、その後、私(トランプ)は市場で安く不動産を買う機会を与えられるからだ」と述べている。
American United for Changeの有名なRobert Creamerは、トランプの申告書を開示するまではわからないことが山ほど(lots and lots)あるとインタビューで答えている。本当にトランプは財産があるのか、オフショアに口座を持っているのか。チャリティーに寄附しているのか、まともに申告しているのかはわからないと言っている。
これも有名なピュリッツァー受賞のレポーターであるDavid Cay Johnsonはトランプのビジネスを長くモニタリングしてきたが、今回の確定申告書の開示拒否につき「トランプは嘘をつく、彼は実際そのように宣誓供述もしている。トランプは過去に架空の名前John Barronを使用していた」と証言している。(1980年代、John Barronはトランプのスポークスマンと考えられていたが、John Barronは実在せず、トランプがスポークスマンとしてコメントしていたのが後になってバレた)スポークスマンになりすまして、自分の財産や収入につきいい加減な報告をしていたと、トランプ自身が当時認めていた。
これらの報道(日本ではないが)がアメリカのメディアに伝わるにつれ、ニューヨークタイムズでさえ、これほどいい加減な大統領候補を今まで見たことはないと言い出す始末で、最近の世論調査でもヒラリークリントンとの差が開く一方だ。しかも周りの共和党支持者も、トランプに投票したくないという人たちが多く出始めている。私はこれで先が見えたと思うので、トランプのシリーズは終わりにしたい。
☆ 推薦図書 ☆
奥村眞吾著 『相続税対策としての家族信託』 清文社 2,200円+税
今年も3冊目の本である。今や世界でも一番相続税の負担が重くなった日本。4800万円以上財産を持って死ぬと、相続税がかかる。将来に備えて貯えた貯金、株式、あるいは生命保険、それに自宅などの不動産、これら全部あわせて4800万円以上となる人々は数えきれないくらいいる。しかし、これらの人に相続税が襲い掛かってくる。したがって、日本の相続税は今や大衆課税である。所得税・住民税を支払った後、形成した財産にまた相続税がかかる、二重課税であるが法は法、仕方がないが、手をこまねいていても始まらないので相続税対策をしなければならない。それでも今や80歳、90歳をゆうに超えた人に、賃貸ビルを建てて対策をとか、海外を活用して税対策を、と言ってもできるかどうか。何よりも、厚労省発表でも462万人の認知症患者がいて、しかも400万人も予備軍がいる。このような人たちに対策をせよと言っても無理である。そこで「信託」を活用すれば、これらの問題を解決できる場合が多くある。「委託者」「受託者」「受益者」を家族全員で参加して、年老いたおじいちゃん、おばあちゃんも信託を活用すれば、このように相続税対策ができるのだという画期的な本であると思う。