僅か法人税2~3%しか払っていない巨大企業の代表的なグーグル、アマゾン、フェイスブック等々。これらの企業はどのような節税方法を行っているのか。ブルームバーグによると、グーグルなどはバミューダ諸島にあるシェル・カンパニーに資産を移すことによって税金を回避しているという。バミューダ諸島は全くの無税国で、しかも金融取引は法律によって完全に秘匿される。シンガポールなどの比ではない。グーグルが用いる節税スキームをダッチ・サンドイッチ&ダブルアイリッシュ(Double Irish with a Dutch Sandwich)と呼ばれる手法である。
例えば、アップルはカリフォルニア州の企業だが、アイルランドに子会社Aを作り、その子会社Aにアメリカ国外でのビジネスライセンスを与える。そして子会社Aは特許ロイヤリティー収入を、アイルランドにもう一つ作った子会社Bにサブライセンスを付与する。Doubleとあるのは、アイルランドにもう一つ子会社を作ることで、カリブにある非課税の会社に他の利益を移転させる。ここにアメリカ国外の利益のほとんどを集中させる。当然、子会社はアメリカ本社にライセンス料を支払うが、直接アメリカ本社に支払わず、オランダの別会社を経由し支払う。何故ならオランダを経由すれば、源泉徴収税を免れることができるからだ。
このように、アイルランドが他のヨーロッパ諸国と結んだ条約の関係で、利益もオランダを挟めば非課税にできることを活用しているので“Dutch Sandwich”と呼ばれる。アイルランドに二つの子会社を持ち(Double Irish)、中にオランダをかますことで“Dutch Sandwich”となるのだ。
さらにアップルはネバダ州リノに社員3名のオフィスがあり、会社の利益をこの地域から投資に回すことで地方税を回避している。カリフォルニア州の地方税は8.84%に対し、ネバダ州はゼロである。その他、ヒューレット・パッカード、マイクロソフト、スターバックスなども皆さん、アイルランド、オランダ、ルクセンブルク、ヴァージニア諸島に子会社を持っている。企業の利益は株主のものであるというアメリカの考え方。日本の企業風土とはかけ離れている。日本の上場企業はそこまで節税して株主に配当しようと考えていない。日経平均が伸びないのも一理はある。
アメリカ政府はこれらの節税策を見て見ないふりをしている。何故か。雇用である。アメリカ大統領の通信簿は「雇用と投資」である。高い税金をかけてアップル本社が海外に移転したら、失業率は高くなる。Jobless Ratioこそが問題なのである。日本政府も日銀も金利は言うが、失業率は議論にならない。不思議な先進国である。
☆ 推薦図書 ☆
國重惇史著 『住友銀行秘史』 講談社 1,800円+税
著者は楽天の三木谷氏の右腕で有名だったが、その前に住友銀行の若くして取締役になった人で、今の三井住友銀行の奥会長とは同期入行である。東大から住友に入り、主に企画畑を歩き、何と10年もMOF担であったというから、超エリートコースを歩んできたと言える。この本はまさにバブル期の経済犯罪であった「イトマン事件」を赤裸々に書いている。彼の住友銀行時代に全てを綴った手帳の公開でもある。住友銀行の暗部を実名で、この本に登場する人物も実名で書き、戦後最大の経済事件が500ページにも及ぶので登場人物もかなり多く、私との共通の知人も何人かいるので笑った。「大蔵省とマスコミに内部告発状を送ったのは私だ。磯田会長を退陣に追い込み、上層部を動かし、我が住友銀行は生き延びた。そのなかで行内の人間関係が露わになり、誰が本物のバンカーなのかわかってきた」と。
最近、パナソニックやシャープなどの人事抗争の本が売れているが、書いているのは第三者だ。歴代の頭取や役員、幹部、取引先、イトマンの河村氏や許永中、伊藤寿永光など逮捕された人々を著者独特の評言で人物を捉えている、実録である。500ページは一気に読める。住友銀行と裏社会の勢力はこれほど近かったのかと改めて認識した。
それにしても、住友銀行のトップだった西川善文氏もザ・ラストバンカーを書いた。三井や三菱には銀行を去っても、この種の本は書かない。住友ならではの伝統になりつつある。