少々難しい話となる。タックスヘイブンの国に会社を設立し、そこに利益を集中させる。そうすれば連結決算で税引後利益が膨らみ、配当なども多く出せる。
わが国の平成29年度税制改正では毎年のことながら、こういった節税策をことごとく封じ込める税制改正案を公表している。これは、国際的租税回避防止のためにOECDが唱えている税源浸食と利益移転(Base Erosion and Profit Shifting)の行動計画において、税逃れ対策が大きく強化されたことによる。タックスヘイブン国に会社を設立して税金を逃れたとしても、タックスヘイブンにある子会社の利益も日本の会社の利益に上乗せするという、タックスヘイブン子会社合算課税制度というのが日本にある。
この合算課税の対象となるのは、5つあって、①事業基準(実際に事業をしているのか)、②実体基準及び管理支配基準(組織としてあるのか)、③所在地国基準、④非関連者基準、⑤経済的活動基準の5項目を満たさなければ合算課税となる。
現行法では、この5要件を満たす外国子会社であっても、資産性所得のうち所定のものは合算課税の対象となる。平成29年度改正では資産性所得が受動的所得として認識されるものは全て合算課税の対象となる。しからば「受動的所得」とは何なのか。受動的所得という言葉は初めて聞いたが、それは「利子、配当、有価証券の譲渡益、貸付の対価」など、つまり不労所得というわけである。家賃や地代なども含まれるが、ここまでやるかという感じである。
この外国子会社合算は、日本に住んでいる者にも課税対象になるということでは要注意である。租税特別措置法第40条の4は居住者に係る特定外国子会社等の課税対象金額等の総収入金額算入という条文である。例えば、日本の会社のオーナー社長が、外国に個人投資用の会社を設立したとする。その国はシンガポールか香港であったとする。そして利益に対して、その国で課税され納税したとする。その外国会社から社長には報酬も配当も支払われていない。しかし、そのタックスヘイブンにある外国会社に利益があると、その留保利益に対しオーナー個人が日本で更なる合算課税が行われ追徴税額を払わされる。
それらが、どうして発覚するのかというと、今の時期に確定申告で記載される「外国財産調書」で外国会社株式の記載によってである。投資用であれ、節税用であれ、外国にペーパーカンパニーを設立する場合の要注意である。ほとんどの日本人はこれを知らない。
☆ 推薦図書 ☆
奥村眞吾著 『住宅・土地税制がわかる本 平成29年度版』 PHP研究所 600円+税
この本は毎年の税制改正のたびに新しく出版されていて、20年にもなる。税の入門書であるが、相続税・贈与税の基本的しくみから、住宅・土地を購入し、所有し、売却するまでの個人に関わる税を平易に解説している。
また、不動産にまつわる各種優遇措置や住宅ローン、長期優良住宅から省エネ改修税制までをコンパクトにまとめ、この一冊で一般家庭が知らなければ損をする各種税制をわかりやすく、図解と設例で示している。長年のロングセラーである。