平成29年度改正税制でビットコイン等仮想通貨の売買にあたっては、消費税は非課税とされた。これで日本もビットコインの流通は盛んになるだろうか。
アメリカでは仮想通貨を扱う会社に対し税務調査の一環として、顧客リストをIRSへ提出せよといっている。ウォール・ストリート・ジャーナルによると、IRSの標的にされたのはCoinbase Inc.という会社で、ビットコイン取引及びWalletサービスを扱う会社である。この会社は620万人の顧客があり、33か国にわたり610億ドル(約7兆円)の取引を行っている。ビットコインは、アメリカではゴールドに代わる投資として人気があり、インターネットにより安全に早く資金を移動させたり、商品を購入できたりする。日本もビックカメラがビットコインで決済できるようになった。
IRSは今回、John Doe SummonsをCoinbase社に対して、2013年から2015年までのアメリカ人顧客リストの提出を求めた。John Doe Summonsとは特定の人物に対しての情報を求めるのではなく、IRSが指定した特定の範囲のデータを指すものだが、このデータは何十万人という顧客になるとして、Coinbase社は法に従いたいところだが、IRSの要求はあまりにも範囲が広い。したがって、Scope及びFocusを絞らない限り顧客リストの提出はしないと、徹底抗戦の構えである。これに対しIRSは裁判所に召喚命令を出すように要請した。
IRSがこのように顧客リストの提出を執拗なまでに要求する背景には、数年前、John Doe Summonsはアメリカ人の脱税の温床となったスイス銀行等にあるオフショア口座を発見する手段として利用したのである。今回もビットコインを利用した脱税犯を捕まえる手段として利用したい、という意図がありありである。Coinbase社によると、IRSの要求する人数は3万人以上にのぼるかもしれない。税に詳しい評論家は、IRSによる捜査でこれほどの数は史上最大数だとしている。
裁判所の記録によると、IRSが言うには、確定申告書でビットコイン利用者はあまりにも少ないとしていて、また、ある法人2社が脱税目的でCoinbase社にてビットコインを利用したと自白している。反対にビットコイン利用者は、ビットコインのような仮想通貨に関する税法上の規制が存在していないので、責められるのはIRSの方だと主張している。
アメリカの税法上は、ビットコインは通貨ではなく有価証券であり、Capital Assetだと定義している。そうなるとアメリカ税法上、株式と同様となるので、長期・短期の保有の区別(日本ではそのような区別はない)をし、取引を行う都度、Capital GainかLossを記録しないといけなくなるので、頻繁に取引する者はその書類が膨大になる。IRSを管轄する財務省のThe Treasury Inspector General For Tax Administrationは、スタバなどでコーヒーをビットコインで購入する例をあげ、このコーヒー一杯を正当に税務上申告することがいかに複雑で大変かを説いている。
仮想通貨は今後も増え続けるだろうが、かつてのスイスを経由した脱税よりも、はるかに簡単にインターネット上ででき、しかもペーパーは残さない。これを利用した脱税者は今後、手口も含めますます巧妙になる。IRSはこれにいかに対処するかが大問題である。しかし、日本の国税庁としても、けっして対岸の火事ではないはずだ。ビットコインはボーダレスだから。
☆ 推薦図書 ☆
ケント・ギルバード著 『儒教に支配された中国人と韓国人の悲劇』 講談社 840円+税
著者は日本では有名なアメリカ人弁護士である。この本を読んで思ったことは、アメリカ人がこれほど日本の歴史や文化を研究しているということである。日本人の大学教授の知識をはるかに凌駕しているのには驚いた。
アメリカ人は、世界の中心はアメリカであるという考えなので、アメリカ以外の国にあまり関心がない。中国、韓国と日本の違いは大きいが、それをわかるアメリカ人はほとんどいない。しかし、ベトナム、ラオス、カンボジア、ミャンマーの違いがわかる日本人はどの程度いるのだろうか。著者は、日本人、中国人、韓国人には相当な大きな隔たりがあると思い、最新のDNAを解析してみたところ、そうであった。物事に対する考え方や捉え方が、日本人と、中国人、韓国人とは正反対と言っていいほど違う。
儒教の代表的教科書である「論語」。「己の欲せざる所、人に施すこと勿れ」(自分が人から、されたら嫌だと思うことを、人にやってはならない)、つまり他人に迷惑をかけることを何よりも戒める。日本人のメンタリティーにピッタリである。ところが儒教文化こそが現代のネックとなっている。中華思想では、中国の皇帝こそが世界の中心であり、世界のすべてが中国皇帝の所有物であると考える。大隈重信は「支那が古来、幾多の革命を経たにもかかわらず、その文明の上になんら新しい要素を加えてこなかったのは、孔子の儒教を万古不易の道と誤認して、宗教的偏執ともいえるものを抱き、それのみに拘泥して他を排斥してきたからである」と言い、さらに「こうして儒教は次第に頭をもたげてきて、漢末には、王莽(紀元前45~23)によって偽善を飾るのに利用された」としている。さらに毛沢東によって文化大革命で完全に利己主義に陥ってしまった、今の中国人であるとしている。南シナ海問題等も彼らには「過ち」という概念は存在しない。著者によれば中国人は「禽獣以下」の社会道徳や公共心しか持てなくなったとしている。