富裕層の関心ごとは、健康と税金である。日本人も平均寿命は女87歳、男82歳にまでなり、100歳以上も珍しくなくなった。ただ、日本の場合は欧米には存在しない「寝たきり老人」が多く、介護の世話にならない健康寿命は男71歳、女74歳である。つまり、平均して亡くなる前10年間は介護の世話になっているということが現実の日本である。
このほどブルーンバーグが発表したアメリカ人の寿命に関し、Society of Actuariesは、65歳の余命は6か月ほど縮小し、白人の寿命は短くなってきているとしている。おもしろいのは、寿命の差は富裕層と低所得者層が年々大きくなってきて、富裕層の長生きは社会保障の恩恵も当然、低所得者層より大きくなる。
同紙によると、41歳から51歳を対象に所得を基準として彼らの寿命を分析した結果、1980年では所得上位20%に入る50歳の男性は、最も所得の低い下位20%グループに比べると5年長生きしていたが、2010年になると、その差はなんと12.7歳まで広がった。さらに分析すると、所得下位20%のアメリカ人男性は76歳まで寿命があり、所得上位20%の者たちは89歳まで寿命があるという、驚くべき結果である。女性のデータは出ていないが、寿命13歳の差は大きく、富裕層ほど年金などの社会保障を長く享受できるというわけである。1980年には50歳の富裕層は低所得者層よりも10万3,000ドル(1,200万円)ほど多く年金などを受給できたのに対し、2010年には17万3,000ドル(2,000万円)も多く受給できることになったという。
なぜ、低所得者層寿命が短いのか。低所得者層には薬物と肥満がある。経済的格差が健康の格差を引き起こしていると、アメリカではよくいわれる。トランプ大統領により、オバマケアは風前の灯である。ますます低所得者層の健康不安が増大する。アメリカでは、貧しい人たちのためにあるべき社会保障制度は富裕層に使われる国になっている。お金持ちはますます長生きし、貧しい者はますます短命になる。
これはアメリカだけでなく、ロシア、中国はもっと格差があるといわれる。医療費と社会保障で国家が破たんするといわれている日本。生活保護者は医療費がタダなど、世界に比べて日本の低所得者層ほど恵まれている国は他にない。
☆ 推薦図書 ☆
長嶋修著 『不動産格差』 日本経済新聞社 850円+税
アベノミクスや東京オリンピックの恩恵を受ける物件は、ほんの一握り。大半の不動産は下がり続け、全国の空き家比率は3割に向かう。人口減、超高齢化時代における住宅・不動産の見極め方を教示するという本である。
2017年、今年の地価公示では、東京23区の最高価格(㎡当り)は5,050万円と、90年代バブル期のピーク3,850万円を30%上回った。一方、大阪市の最高価格は1,400万円と、バブル期の3,500万円に対して、僅か40%の水準にすぎない。
つまり、都内の一部地域だけが不動産バブルなのである。中央区、千代田区、港区のエリア、その他の地方都市は下落だ。駅からバスに乗って住む地域はだめ。著者は、マンションは「駅7分以内」しか買うなと言っている。9割の不動産は下落に向かう。世界的にみても日本よりも、もっと住宅価格が下落に向かうのは中国と韓国である。その原因は日本よりも早く、少子高齢化が進むからだとしている。