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日本にいるアメリカ人には吉報か

現在、トランプ政権も税制改革に取り組んでいる。しかも真剣にだ。大統領就任後、オバマケアの撤廃、移民法の改正、そして国境に壁を作る財源など、共和党内の反対もあって、苦戦している。しかし、税制改革は進んでいると言ってもいい。

 

共和党が主導しているアメリカ下院のHouse Ways & Means Committeeの計画によると、今回の税制改革の大きな点は、“Worldwide”Tax Regineから“Territorial”Tax Systemへの変更だとしている。さらに、上院におけるSenate Finance Committee ChairmanのHatch国会議員も、アメリカ国外に住むアメリカ人(900万人)の税制を変えなければいけないと言っている。例えば日本人がアメリカに住んで、日本での所得が全くなければ、日本で申告を行う必要はない。しかし、アメリカ人は日本に住んで、アメリカでの所得が全くなくてもアメリカでTax Return(申告)をしなければならない。

 

このことをCitizenship-based Taxation(CBT)と呼び、アメリカ市民権者はどこに住もうともアメリカに課税義務が生じる。それとは反対に、住む所によって課税義務が生じるのをResidency-based Taxation(RBT)と呼び、アメリカ国外に住んでいるアメリカ人は、アメリカで生じる所得のみ申告し課税されるということになる。今は、アメリカ人はどこに住もうとも全世界所得をアメリカに申告し、課税されるシステムになっている。しかし、このシステムを採用しているのは、アメリカの他には北朝鮮とアフリカのエリトリアだけである。

 

このように、なんでアメリカに住んでいないのにアメリカで所得税を払わなければならないのか?日本で住んで、日本の家を売却したときの譲渡税を、なぜアメリカで払わなければならないのか?例えば日本に住んでいるアメリカ人はアメリカに提出する申告書の他に、日本での投資や金融口座があれば申告書の様々な書式を添付するほかに、アメリカ財務省宛金融口座の開示をしなければならない。これらはプロの手を借りなくしてはならず、申告書を作成するうえで高額になる。

 

American Citizen Abroad(ACA)という団体はアメリカ国外に住むアメリカ人を支援する非営利団体で、40年以上もRBTへの税制へ移行する運動を続けている。その成果がやっと、今年の税制改正で実るとしている。世界でCBTを採用している国は、北朝鮮とアメリカだけというのも奇妙な取り合わせではないか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
唐池恒二著 『本気になって何が悪い』 PHP研究所 1,700円+税
私が親しいPHPの佐藤義行氏が編集した本であり、JR九州会長唐池氏の「鉄客商売」に次いでの第二弾である。
「逆境」と「屈辱」、この二つの言葉は大変な力になる。
屈辱とは何か。1987年、国鉄が解体され、JRが誕生したとき「三公社」という言葉が死語になり、代わりに出たのが「三島」。JR北海道、JR四国、JR九州のことをまとめてこう呼ぶようになった。JR東海、東日本、西日本の新幹線を持つ三社が、地方を見下した傲慢さ。「今に見ておれ、本州三社を見返してやる」。この気持ちがあったからこそ這い上がった。
例えばレストラン事業。着任するまでは売上25億円、赤字が8億円、三年目に黒字化した。外食産業は手作りでなければならない。外食はメーカーである。それには4つの法則がある。①スピードのあるきびきびした動き、②明るく元気な声(挨拶や会話)、③スキを見せない緊張感、④良くなろう、良くしようという貪欲さ、それに加えて「夢みる力」があればなおさらだと。
この本はJR九州の会長の考えだが、一般社会のビジネスの法則でもあると思う。そしてこの本の、表紙の絵が素晴らしい。「まえがき」にその解説が載っている。

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