この2、3週はトランプのアメリカ税制に関してのブログだったが、今回は日本の税制改正に目を向けてみよう。
アメリカは相続税の廃止に向けて、基礎控除を600万ドル(6億7000万円)に引き上げ、所得税率、法人税率も最高税率を引き下げようとしている。所得の高い者を優遇する。これは、そうした者は、アメリカの投資と雇用に貢献していると考えるからで、国として畏敬の念を持っているからである。
一方、日本ではどうだろう。個人への累進課税が極端に高い国である。消費税率の引き上げを見ても、低所得者と高所得者が同額の負担はおかしい。これは逆進税率などと言う始末だ。こんな先進国はない。共産党の国でもこんな議論はない。
自民党の宮沢洋一税制調査会長は来年度税制について、家族構成の変化や多様な働き方に即した税制に改めるのが課題だとしている。所得税率改革では3点あって、①基礎控除、②給与所得控除、③公的年金控除である。
①基礎控除は現在38万円だ。納税者の誰もが平等に受けられる。これを50万円に引き上げる。現在の制度では、高額所得者はこれによって約20万円の税負担の軽減になるが、低所得者はさほどではない。あたり前の話だ。それだけ多く税金を払っているのだから、軽減額も多くなる。しかし、これが公平性を欠くと国は言う。改正案では、2500万円を上回る所得者は基礎控除はなし、一定以上の所得者には段階的に基礎控除を減らせとする。
②給与所得控除はサラリーマンの必要経費である。必要経費の額は定められていて、収入が上がるにつけ、少しずつ必要経費が増え、収入が1000万円で220万円となる。それ以上の収入があっても年間220万円が限度である。私見ではあるが、年収1億円の人が年間220万円で出費が収まるだろうか。結婚式や葬式の出番が多く、それなりの身なりも整えなくてはならない。とてもじゃないが、給与所得控除は低すぎる。しかし案では、年収800万~900万円台で最高控除限度額を188万円に引き下げるとしている。これでは中間管理職の一流企業の社員は明らかに増税になる。
次に③公的年金等控除は厚生年金や企業年金など、年金収入に応じて一定額を差し引くものだが、改正では基礎控除の引き上げ(12万円)分と同額だけ一律に引き下げる。但し、年収1000万円超を目安に上限を設ける。年金以外の収入が多い場合は、年金控除額を減らすとしている。
このように年収の多い者は、例えば給与所得控除と年金控除の両方を受けている場合、基礎控除を引き上げると、それぞれの控除から引き上げた分を引くので二重増税となる。無茶苦茶な話である。例えば一家4人で、稼いでいるのは主人のみ。このサラリーマンの年収が1500万円とした場合、2017年からの3年で28万円負担増となる。このように、高所得者の狙い撃ちが続けば、働く意欲を失わせ、経済の活力維持にも影響が出る。人手不足が深刻になるなか、働く高齢者の勤労意欲も阻害するのではないかという意見もある。
もともと今の日本の税制は「取りやすいところから取る」が原則。これでは優秀な外国人を日本に誘致も、絵空事で終わってしまう。お金持ちを粗末に扱う国は亡びるのではないか、という危惧はある。
☆ 推薦図書 ☆
小谷みどり著 『<ひとり死>時代のお葬式とお墓』 岩波新書 780円+税
ひとり死の時代になりつつある今、火葬のみのお葬式や、共同墓がさらに広まり、墓の無縁化も進んでいる。個人は死後を誰に託したらいいのかを悩み、自治体は身寄りがいても遺骨を引き取らないケースが増えているといった、新たな課題に直面している。
2015年に亡くなった人のうち80歳以上の人の割合は男性で50.4%、女性で73%。つまり、日本では80歳を超えても生きられる社会になったということだ。反面、寝たきり老人や認知症の問題も多くなった。「老・病・死」である。例えば、参列者のいない葬式や遺骨をお寺に郵送する等が増え、身寄りがいても引き取られない遺骨が急増加している。
これらのことから、終活への関心の高まりは、自分らしい最期を考えたいというよりは、家族の在り方が多様化したことによって、自分で予め考え、備えておかなければならない時代になったのである。
限られた生を、どう全うするのか。死ぬときぐらい好きにさせてくれという声があるなか、そうしたら自分の死後を、誰に託すのか?考えさせられる著である。