ビットコインなどで、利益を得ると確定申告しなければならない。しかし現実問題として、誰が、どこで、どんな取引をしているのかを把握するのは至難の業だ。
日本の国税当局に「電子商取引専門調査チーム」なる部がある。この電商チームがこれらの情報収集にはWebサイトやマスコミ関連情報から得る。ビットコインなどで儲かると、雑所得として申告する義務がある。まもなく平成29年分の確定申告が3月15日を期日として始まる。わざわざ国税庁は「平成29年分の確定申告において、ご留意いただきたい事項」に電子商取引に関しての所得の申告をうたっている。ビットコインだけでなく、匿名でネットオークションを行っている者も対象である。これらの者の税務調査をどのように行うかというと、プロバイダ等に対して任意の情報提供の依頼を行い、その者の情報を収集する。その収集した情報をもとに調査事案が選定され、実地調査に踏み切る。
仮想通貨の売却等によって得た利益は申告しないといけないが、無申告となっている者が特定されれば、取引所に対して情報提供の依頼が行われることになる。電子商取引を行っている者に対して今年から適正申告を促すキャンペーンも行う。アフィリエイトに係る報酬が無申告になっているケースが多く、アフィリエイターと広告主を仲介する「アフィリエイト・サービス・プロバイダ」に依頼し、その仲介業者に登録しているアフィリエイターに対して、申告を促すメールを送信してもらい、注意を喚起するという。
国税局もAIを導入し、仮想通貨やフリマアプリ取引に本格的メスを入れる方に舵を切った。そのうち、大型のこの種の脱税事件が報道されるだろう。
☆ 推薦図書 ☆
日野原重明著 『生きていくあなたへ』 幻冬舎 1000円+税
105歳 どうしても残したかった言葉と副題がついている。ご存知の聖路加国際病院名誉理事長である。聖路加は「セイロカ」と言わず「セイルカ」と読む。これはイエスの弟子の聖ルカをとったものである。著者、日野原先生は京都帝大医学部卒だが、その前の高校(当時は旧制中学)は私の母校(ミッションスクール)でもある関係で、同窓会で何度かお目にかかった。
この本は、「私の長い人生が終わろうとしているけれども、私の人生だけではなくて、これから人生をまだまだ長く続けていく、あなた達と一緒に、どのように受け継いでいくか」「人間は弱い。死ぬのは僕も怖いです」「今私は、新たな旅立ちの心意気を感じています。言い尽くせない感謝の気持ちと、言い尽くせない喜びを胸に、修行のような私のこの旅を、静かに、トボトボと、もう少し続けていたいという気持ちがしています」。
著者はクリスチャンで、「死」をどうとらえているかということに関して、「一粒の麦は、地に落ちて死ななければ、一粒のままである。だが、死ねば多くの実を結ぶ」(ヨハネによる福音書)。著者は先に亡くなった妻について、寂しいような気がするが、実はそうではなく、麦が地面に落ちれば、翌年には多くの実を結ぶことになる。つまり、一粒の麦は死ななければいけない。死ぬことによって、無数の麦の誕生につながるという希望を示しているのだと。
死そのものは怖いが、そこで人生のすべてが終わるという感覚よりも、新しいものが始まる予感がある。これまで医者として人々を助けるためにこの世での時間を使ってきたが、新しい世界でこそ本当の仕事が始まる。「本当の仕事をするとき、僕の肉体はこの世にないかもしれません。それでも、一粒の麦のように、死によって僕の遺した言葉が豊かに実っていくことを願っているのです」
日野原先生、私が最後にお目にかかったのは先生が101歳の時。いつも、いつもエルメスのネクタイをされて、笑顔で為になるお話をいただいた。感謝。