「外国子会社合算税制」というのが日本にはある。これは外国子会社を利用した租税回避を防止する目的である。外国子会社の税負担率が20%未満、つまり、ほとんどゼロに近いところの国に子会社を持ち、利益をそこに移転すれば、日本の税から逃げられるということで、その子会社の利益を親会社の利益とみなして、日本法人の利益と合算し、日本で課税を行うというのが「外国子会社合算税制」と呼ばれている。
このほど、ソフトバンクグループ(SBG)が東京国税局から939億円の所得漏れを指摘された。タックスヘイブンと呼ばれる国や地域がある。ほとんど法人税や所得税、相続税がかからない。有名なケイマン諸島、パナマ、ガンジーなど、そのうち特に有名なバミューダ諸島に東京国税局が指摘したSBGの完全子会社があった。この子会社は全くのペーパーカンパニーで事業実態がなく、調査の結果、東京国税局は約1000億円の利益を親会社の利益として加算した。
この子会社はアメリカの携帯電話会社の大手スプリント、携帯卸大手ブライトスターで、両社共にSBGの子会社である。この2社はもともとバミューダ諸島に子会社を所有し、事業目的で支出した保険料の一部を子会社の所得としていた。東京国税局は税務調査でタックスヘイブン税制を適用し、子会社の利益は親会社のSBGの所得に合算すべきだとして課税した。さらに、ブライトスター社がシンガポールに所有する子会社の中古携帯端末の流通にも、税逃れであるとして課税した。
SBGは「買収した会社がアメリカで納税していたので税務上問題ないと考えていたが、国内でも納税が必要という国税局の指摘に従って修正申告した」と言っているが、それはないだろう。これだけ海外の企業を買収しているソフトバンクである。それを知らないはずがない。数年前もヤフーの脱税事件を巡って孫氏が法廷にまで立たされた。今回の1000億円もまさに確信犯である。
今、まさに、森友、加計問題でメディアが騒いでいるが、このソフトバンク1000億円は騒がない。大手広告主、スポンサーに不利なことは絶対報道しないという姿勢が日本のマスメディアにある。これは昔から変わらない。テレビの白い犬のおかげである。納税意欲に乏しいソフトバンク、もしソフトバンクの本社がアメリカにあれば、孫氏はCEOではいられないであろうことは確実である。
☆ 推薦図書 ☆
瀬畑源著 『公文書問題』 集英社 740円+税
公文書問題がこれほど大きく問題になったことは今までなかったと言っていい。森友、加計、それに自衛隊の南スーダン国際平和協力業務(PKO)。特に、森友学園に8億円の値引きをして国有地が売却された経緯がわかる文書が存在しないことで、安倍政権が大きく揺らいだ。そして更に騒ぎを大きくしたのは、安倍内閣の閣僚と財務省等の高級官僚が、騒ぎの原因が公文書のずさんな管理にあるのに、公文書の管理はなされていると開き直る発言。これらは官僚にとって、公文書管理をより良くする制度を作ろうとする意志が全くないといっていい。
2016年、国会で環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)に関する議論が行われた。ここで野党から交渉に関する文書を出せとの質問に「甘利前大臣とフロマン代表との会談の内容については、内閣官房TPP政府対策本部の一部の幹部職員のみで共有、記録は残されていない」と答弁。後に政府は「TPP交渉には各国との秘密保持契約があり、協定発効から4年間は交渉中の文書は表に出せないため、日本政府の判断で公表できない」とのことだった。
これらからも分かることだが、文書の「作成」と「公開」は異なる。すぐ公開できない文書でも、時が経過すれば公開できる。しかし、日本の官僚は「由らしむべし知らしむべからず」なのかと著者は問うている。