「金の密輸」とはどういうことかというと、正式に金を100万円相当輸入すると、輸入した者は100万円+消費税で108万円を払わねばならない。輸入した金を国内で売っても100万円+消費税の108万円を受け取ることになるが、儲からない。したがって、輸入した際、消費税を払わなければ8万円の儲けになる。観光旅行者が海外でブランド物を買いあさるのと同じだ。日本で買うより少なくとも消費税分が助かる。しかし商売で輸入するとなると話は別だ。消費税は「国内において行った課税資産の譲渡等及び保税地域から引き取る課税貨物について消費税を課税」、つまり当該貨物の保税地域からの引取りの際、8%の消費税を納めなければならない。密輸となれば、モノが保税地域に入らずに直接業者の手に渡るので、8%まるまる儲けである。その為、近年、福岡での強奪事件をはじめ暴力団関係が絡む密輸事件が増大している。
過去10年間の当局の摘発状況を見ると、平成20年に4件だったものが平成25年に12件、平成26年は119件に増え、平成27年は465件、平成28年811件、そして平成29年に1347件と急増している。最近の金密輸は手口も巧妙化し、組織的に行われるようになった。こうした事態を重く受け止め「ストップ金密輸」と財務省関税局が乗り出した。平成30年度税制改正において消費税法第64条、関税法第111条が改正された。改正前の法定刑は消費税法違反については懲役10年以下及び罰金1000万円以下(脱税額が1000万円超については脱税額を限度)、関税法違反については懲役5年以下及び罰金500万円以下(但し、金地金は関税法上は無税)。つまり、見つかっても、本来支払わなければならない消費税にペナルティーを上乗せした程度。
最近の金密輸は主婦まで手を出すようになり、社会問題化されると改正前の罰金額では目的を達することができない。そこで改正では「脱税額の10倍が1000万円を超える場合には、脱税額の10倍に相当する額以下」と一挙にペナルティーを引き上げた。この「脱税額の10倍」としたことによって、例えば1億円の金を密輸した場合、脱税額は800万円である。しかしペナルティーとして最高8000万円も払わなければならない。大変な抑止力になると当局は言っている。しかし税関職員の人数も増やさず、輸入申告件数が膨大になるなか、はたしてどれだけ効果があがるのか。メキシコ国境での密輸と密入国を取り締まっているアメリカの成果と同じにならなければよいが。
☆ 推薦図書 ☆
里中李生著 『男はお金が9割』 三笠書房 650円+税
「男はお金ではない」「男は精神力」という人もいるが、最重要なのは、お金。お金を持ったからといって、楽しくてしかたがないというわけではない。
特に「税金」という国家権力との戦いがあり、相続税などで深刻に悩んでいる。だが貧乏な人は、その戦いの土俵にすら立つことができない。そして下品なお金持ちからも軽蔑されるのだ。ぜひ貧乏から脱出してほしい。「あっという間にお金持ちになる本」を読んでも、お金は入って来ない。お金持ちは考えてお金を使うが、貧乏人は無自覚、回転寿司に4000円以上使う男。「意気地」がない男、つまり愚痴は何も行動しない男の口から出るもの。貧乏人は「安いモノ」をたくさん買っている。会社にしがみつく。「お金がなくても幸せ」という女性と付き合うのに対し、お金持ちになる男は「上質なモノ」を選び抜いて買っている。女性関係もである。「恋こそが女の幸せ」という古典的な言葉があるが、必要なモノを欲しがる女性が一番あなたを奮起させる。つまり物欲のある女性が必要である。清貧を好む女性はお金を生まない。人材教育のアチーブメントでは「頂点の道」という超大人気の講座があるが、著者は、貧乏な人は「頂点の満足感」を知らない。と締めくくっている。名言である。