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日本の相続法が変わる。配偶者有利に

夫が亡くなったとき、相続人が妻と子の場合、妻は相続財産の2分の1が法定相続分、つまり夫の遺産の50%を取得する権利がある。仮に夫が家(5000万円)と他の預貯金(5000万円)を残して死んだ場合、妻が家を相続したら、残りの預貯金は子に渡さなければならない。そうなると妻は老後の住いに心配はないが、生活の金に困る。
今回の民法の改正では、遺産分割の対象から「自宅」を除外することにした。画期的だ。これによって妻は「自宅」を相続しなくとも、亡くなった夫の妻であれば、死ぬまで、その家に住み続けることができる「配偶者居住権」が創設される。妻は自宅を相続しなくとも、預貯金を相続することによって、老後の暮らしに心配がなくなるという政府の見解である。

 

しかし、家を相続財産から除外しても、「配偶者居住権」はあくまでも財産としての価値があるので、相続税の課税対象となるという。年末の税制改正大綱を待たなければならないが、その相続財産としての価値は、平均余命などを基に算出され、妻が高齢であるほど安くなるという。

 

国税庁は何が何でも相続税を取るという姿勢である。私は嘆かわしいと思う、海の向こうのアメリカでは、配偶者の相続は何百億円であっても無税である。それどころが生前の贈与も、いくらであっても無税である。この根本の考え方は、夫がいくら有能であっても、妻の支えなしでは財産は築けないし、地位も権力も手に入らないというもの。アメリカ大統領であっても、ファーストレディーと称される夫人あってのものであるという考え方。したがって、夫名義の財産であっても、それは夫婦二人で築き上げたものであるから、夫が亡くなって妻が取得しても、それは妻の寄与分がどれだけかはわからないので、つまり自分の財産であるのだから相続税はかからない。

 

日本は、そうではなく夫の能力と努力によって稼いだ財産を、無償で妻は貰うのだから、贈与税や相続税を課して当たり前という考え。江戸時代の武士の家は武士を継ぐ長男があって存続し、家督を相続するのだから、妻や子は敬えという。家父長制は今もって民法に入り込んでいる。今年の民法改正で相続法は画期的に変わるというが、欧米諸国からみたら滑稽だということになる。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
米山秀隆著 『捨てられる土地と家』 ウェッジ 1000円+税
急増する空き家、空き地。なぜ、所有者不明の土地が増えているのか。今、この国で何が起こっているのか?いらない土地と家の行き場がなくなっている。所有者不明の土地は今や、九州の面積と同じくらいになっている。今後、もっと増えるだろう。東京だけは例外である。地方では、家はなかなか処分できず、中には売り手が買い手に、家の中に残した家財道具の処分費用などとしてお金を支払うことで、実質マイナス価格で売却する例も出てきている。それでも買い手が現れればまだよいが、立地条件の悪さなどから売ることができず、自治体に寄附したくとも自治体は寄附を拒否する。そのため、相続人が空き家を抱え続けなければならない状況になり、したがって、相続時に積極的に登記を行うメリットがないために、未登記物件が多くなる。そうした物件の管理を最終的に誰が担うのかという問題が発生し、事態は深刻化しつつある。人口減少、捨てられる家・土地が増える時代にあっては、所有者不明の不動産がますます増える。空き家や空き地を所有してしまった場合の所有者はどうずればいいのかについて、考えさせられる本である。

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