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「配偶者居住権」とは何ぞ?民法の改正

このほど民法の改正で「配偶者居住権」なる用語が新設された。「配偶者居住権」とは何なんだと、判りにくい、しかも新しい言葉である。解説するなら、例えば、夫と妻の二人暮らしだったとしよう。子は長男一人で、ある日、夫が亡くなった。夫所有の家であったが、その家は長男が相続した。すると長男は自分の母親に「僕の家になったのだから、出て行ってくれ」と言って、母親を追い出す事態が多発しているらしい。私は考えられないことであるが、現実である、日本も世も末か。

 

民法では、被相続人の所有建物に配偶者が居住していた場合に、その建物を他の相続人が取得すると、配偶者は通常その建物に対する独自の占有権原を有していないため、その建物に住み続ける権原がない状態となる。そういう理由から、今回の民法改正で、親が子から追い出される事態を防ぎ、住んでいる家の所有者ではなくても一定期間その家に住み続けることができる「配偶者居住権」なる権利が新設されたのであるが、民法改正を喜んでばかりではない。場合によっては、死ぬまでではなく、短期間で追い出されることもある。この「配偶者居住権」は、①短期居住権と②長期居住権とがあるそうだ。

 

① 短期居住権
亡くなった夫のその妻が、夫の遺産分割協議で、長男がその家屋を取得した場合には、長男が相続取得した時までしか「配偶者居住権」は認められない。しかし、最低、夫の死後6か月間は住める。

 

② 長期居住権
これは、配偶者が、自分の家として無償で使用・収益ができる権利で、原則として終身である。この場合、家の所有権を「配偶者居住権」と長男の「配偶者居住権の負担のある所有権」に二分することになり、登記簿謄本に記載するが、しかし死ぬまで居住することができるのは以下の三つの場合であるとしている。
(1)遺産分割協議によって、母親が死ぬまでここに住んでも良いとした場合
(2)夫の遺言で、妻が死ぬまでこの家に住めるとした場合
(3)家庭裁判所の遺産分割審判で、母親が勝って配偶者居住権を得た場合

 

実際問題、実の親子で、どれくらいモメごとが起こっているかは知らないが、最近、親の子への虐待がよく問題になり、数多くの子が、それによって幼い命を絶たれているのは痛ましい限りである。子が小さいときは親が虐待をし、子が大きくなると親を虐待するのは、最近の日本の風潮かとまでいわれるありさま。しかし、追い出し問題は多分、後妻が絡むことが多いのではなかろうか。

 

 

☆ 推薦図書 ☆
ロバート・K.ウィットマン ジョン・シフマン共著 土屋晃 匝瑳玲子共訳 『FBI美術捜査官 奪われた名画を追え』 文芸社文庫 980円+税
ノンフィクション小説である。文庫本だが500ページを超える。著者のウィットマンはFBI特別捜査官として20年のキャリアを持ち、美術犯罪チームの指揮を執っていた。美術品が巨額で取引されるようになって以来、世界規模で急増してきた美術品盗難事件。大規模、複雑化する凶行を阻止し、犯人を逮捕するために、美術品の巨大市場アメリカで美術品盗難専門の捜査チームをいかに立ち上げ、フランス警察やスペイン警察、イタリア警察と合同で捜査をする。フェルメール、レンブラント、ノーマン・ロックウェル、マネ、ゴッホなどをめぐる盗難品売買。この本では、ローランとサニーという闇の密売人を通して、FBI捜査官たちのおとり捜査や、スパイを交えてのミステリー調だが、美術館から盗まれた名画がいかにして売却されるか、膨大な資料をもとに犯人にたどり着くかをサスペンスチックに書いている。おもしろい。

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