「カレーハウス CoCo壱番屋」創業者の宗次徳二氏の資産管理会社が名古屋国税局の税務調査を受け、20億円の申告漏れがあったとわかった。彼は大の音楽ファンで、私もオペラを通じて彼を存じ上げている。本当に尊敬に値する人で、彼は私財を投じて宗次ホールなるものを建て、広くクラシックを愛する人達のためのボランティア活動も積極的に行っている。そして、普通の人では手にすることができない、あのヴァイオリンの「ストラディバリウス」などを購入し、音楽を極める若者に貸し与えていた。
今回の問題は宗次氏の資産同管理会社「ベストライフ」。宗次ホールの運営や管理をしている会社で、そこが所有している「ストラディバリウス」はなんと30丁もあり、それを減価償却費として毎期計上していたものを否認されたことに起因するもの。ストラディバリウスは1丁で億単位のものだ。減価償却費は30丁もあれば数億円にものぼる。ストラディバリウスは年の経過とともに価値が下がるものではない。むしろ価値が上がる。減価償却とは英語でdepreciationという。動詞で減価償却するというのはdepreciateだが、deはdownで、preciがpriceという意味なので、直訳すれば、まさに減と価であるので減価なのである。
このような億という価値があるストラディバリウスが減価するわけがなく、もしそれが許されるなら、ゴッホやゴーギャンの数十億円の絵画も同様になる。プロの税理士であれば常識として減価償却の対象外であるのがわかる。
宗次氏は記者会見で、「顧問税理士に楽器は減価償却の対象になると言われ、そうした。今は大いに反省している。税理士への法的措置を検討する」と述べている。同業者として言わせてもらうと、ひどい税理士である。無知なのであろう。医師、弁護士、税理士は選ぶ者を間違えると、命と財産が危うくなるというのは現在の格言である。
☆ 推薦図書 ☆
グレッグ・ケリー『西川廣人さんに日産社長の資格はない』 文藝春秋7月特別号 950円(税込)
独占告白3時間、今こそ真実を語ろうと題して、前日産自動車代表取締役でゴーン氏と共に逮捕されたグレッグ・ケリーが赤裸々に語っている。約90億円分の報酬を隠した有価証券報告書の虚偽記載に関わった容疑で東京地検特捜部に逮捕されたケリーは、ゴーン、西川に次ぐ日産のナンバー3であった。
結論からいうと、彼は法に触れることは一切していない。問題の2011年、ゴーン氏は57歳で自動車業界のCEOとしては2番目に若く、かつ、2番目に長いキャリアを積んでいた。60歳になる2014年には退社するとみられていた。ゴーン氏がライバル会社に引き抜かれたら大変なことになるので、退職後に支払う報酬でゴーン氏を繋ぎ止めるため弁護士を含め考えた結果、退職後の報酬額になったのだが、これには西川氏もサインをしている。さらにリゾート地の不動産購入にしても日産自動車内ではゴーン氏だけではないとし、ゴーン氏も要求しなかった「株価連動報酬」は西川氏が手にした強欲過ぎる給与である。結果、ゴーン氏、ケリー本人が逮捕されたにもかかわらず、西川氏だけが普通に生活しているのはおかしいと。